前回の記事では、建材一体型太陽光発電(BIPV)の海外商用化プロジェクトと、国内で始まった実装事例をご紹介しました。
(内部リンク)
ペロブスカイト・CIGSが切り拓くBIPVの未来|海外商用化事例と国内実装事例
次の関心は、「BIPVとは何か」から「導入するために具体的にどのような検討をすればよいのか」へと移っていくことになります。
そこで本記事では、BIPV導入に伴う法制度、省エネ/創エネ視点からのメリット、補助金動向、導入に向けての逆算スケジュールを実務者向けに整理します。
なお、BIPVの主役となる二つの次世代太陽電池について、それぞれの特性を先に押さえておくと本記事の内容がより理解しやすくなりますので併せてお読みください。
(内部リンク)
ペロブスカイト太陽電池の現状と展望は?実用化事例についても解説!
(内部リンク)
カルコパイライト太陽電池とは?ペロブスカイトと並ぶ注目の技術を徹底解説!
[ 本ページにはプロモーションが含まれています ]
2026年度の規制緩和|BIPVのグレーゾーンが解消へ

BIPVは「建物の一部でありながら発電する」という性質上、これまで法制度上の位置づけが曖昧な部分が残っていました。
その状況が、2026年度を境に大きく変わろうとしています。
BIPV設計・施工基準の整備
BIPVは建築資材であると同時に電気工作物でもあります。そのため、安全性の検討には建築基準法と電気事業法を横断した知識が必要になり、設計・施工の標準化を難しくしてきました。
そこで、NEDOにより技術基準のガイドラインが整備され、設計および施工品質の安定化が図られています。屋根置きなど建物に設置するタイプは「建物設置型」、壁面に設置するタイプは「壁面設置」と参照すべき文書が分かれていますので、設計者との協議の際はどちらのガイドラインに基づく検討なのかを確認しておくと話が早く進みます。
これらのガイドラインには維持管理に関する基準も定められており、維持管理計画書の作成は建物所有者が行うことが原則とされています。つまり、竣工後の点検・保守の責任は発注者側に帰属するということです。設置に伴うリスクや管理コストを、設計段階から把握しておく必要があります。
出典:建物設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025年版(NEDO)
出典:壁面設置太陽光発電システム 設計・施工ガイドライン 2024年度版(NEDO)

工場立地法|「壁面」が環境施設として評価される
工場や物流施設を持つ企業にとって見逃せないのが工場立地法の見直しです。
工場立地法では、一定規模以上の工場(特定工場)に対して、生産施設・緑地・環境施設の面積割合が定められています。
:工場立地法の主な面積要件
| 区分 | 基準 (敷地面積に対する割合) | 主な内容 |
| 生産施設面積率 | 30〜65%以下 (業種区分ごとに設定) | 製造工程を形成する機械・装置を備えた建築物等 |
| 緑地面積率 | 20%以上 | 樹木が生育する土地、芝生等 屋上緑化・壁面緑化も算入可 |
| 環境施設面積率 | 25%以上(緑地を含む) | 緑地+緑地以外の環境施設 |
| 環境施設の配置 | 敷地面積の15%以上を敷地の周辺部分に配置 | 周辺地域の生活環境保持に寄与するよう配置 |
※工業地域・工業専用地域・準工業地域などでは、自治体の地域準則条例により、緑地面積率10%以上20%未満、環境施設面積率15%以上25%未満の範囲で引き下げられている場合があります。
このうち「緑地以外の環境施設」に該当するのは、噴水・水流・池といった修景施設、屋外運動場や広場、体育館などの教養文化施設、雨水浸透施設、そして太陽光発電施設です。
ここで押さえておきたいのが、環境施設25%には緑地が含まれるという点です。例えば緑地を20%確保した場合、残る5%分を「緑地以外の環境施設」で満たす必要があるということになります。太陽光発電施設はこの枠に入る一方、緑地の代替にはなりません。
もう一点、太陽光発電施設が売電を事業目的とする場合などは、環境施設から除かれます。環境施設として評価されるのは、あくまで自家消費を前提とした設備という理解が出発点になります。
なお、第三者所有のPPAで導入する場合は、当該設備が工場の管理下にあり、工場側の意向で変更等を行える状態でなければ環境施設として認められにくい点にも留意が必要です。
壁面の面積算定ルールの変更
そこで注目したいのが、今年度中に予定されている発電面積の測り方の見直しです。
| 従来の算出方法 | 見直し後 | |
| 原則 | 水平投影面積 | 水平投影面積 +鉛直投影面積も可 |
| 壁面設置の扱い | 壁面の長さ×1.0m | 壁面の実面積 (正面から見た投影面積) |
| 例:高さ5mの壁面 100m分 | 100㎡として算入 | 最大500㎡として算入 |
従来は、対象物を真上から見た「水平投影面積」が原則でした。垂直な壁面は水平投影では面積が出ないため、経済産業省のFAQ集では、壁面緑化の方法(長さに1.0mを乗じて面積とする方法)を準用することが「一案」として示されるにとどまっており、高さのある壁面に設置しても実態より小さく評価されてしまいます。
これに対し、今後は対象物を正面から測る「鉛直投影面積」も認められる方針となり、2026年度中に工場立地法の運用例規集やFAQ集へ明記する形でルールが整備される見通しです(法改正ではなく、運用の明確化として措置される点にご留意ください)
この見直しが特に効くのは、増築を検討している既存工場です。工場立地法の規制ギリギリの敷地制限で建てられている施設は増築が難しくなるケースが多いのですが、壁面BIPVが実面積で環境施設に算入できるなら、地上の環境施設を建屋に置き換えつつ、基準を維持するという手が打てます。
BIPVが脱炭素のコストではなく、敷地効率と増築余地を生み出す手段に変わるわけです。
すでに国内で工場壁面への設置実例が生まれていますのでご紹介します。
(内部リンク)
国内初! 東急 工場壁面にカルコパイライト太陽電池設置

ZEB評価におけるBIPVの価値
規制面と並んで押さえておきたいのが、省エネ評価上のメリットです。
ZEBの評価には、建築物省エネ法における一次エネルギー消費量の指標であるBEI(Building Energy Index)が用いられます。BIPVはこの数値を大きく引き下げる(BEIは値が小さいほど省エネ性能が高い評価)可能性を秘めています。
ZEBの基本的な考え方や四つのランクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
(内部リンク)
ZEBとは?その定義と必要とされる理由について分かりやすく解説!

発電と日射遮蔽の二重取り
BIPVがZEB評価で有利になるのは、単に発電面積が増えるからではありません。
建築外皮にBIPVを適用すると、太陽電池セル部による日射遮蔽効果が働きます。日射熱の取得が抑えられることで夏季の空調負荷が軽減され、その分もBEIに有利にカウントされるのです。
つまりBIPVは、電気をつくる「創エネ設備」であると同時に、建物の熱負荷を減らす「パッシブ技術」としても機能します。外皮性能と設備性能の両面から一次エネルギー消費量を押し下げられる点が、屋根置きの太陽光パネルにはない特徴です。
屋根面積が足りない場合のプラスアルファ
都市部の中高層ビルなどでは、屋根面積に対して延床面積が大きく、屋根置き太陽光だけでは「ZEB Ready」「Nearly ZEB」止まりというケースが少なくありません。
外壁と開口部という広い面を発電面に転用できるBIPVを導入すれば、そこから「ZEB」へ押し上げられる可能性が出てきます。外装パネル、手すり、ひさし、カーテンウォールのガラスなど、一体化できる部位は想像以上に多くあります。
ただし、ZEBにおける再生可能エネルギーは発電した電気を建物内で使う「自家消費」が想定されており、FIT・FIP制度を利用した売電目的の設備はカウントできないことにご留意ください。

BIPVに使える補助金をご紹介

次世代太陽電池はまだ製品単価が高く、投資回収を早めるために補助金の活用が前提になるケースが多いでしょう。BIPVの導入を検討するなら、活用できる制度を早い段階で押さえておきましょう。
【環境省】ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業
フィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入に際して、3分の2〜4分の3という他の再生可能エネルギー関連の補助制度と比べても高い補助率が適用される補助金制度です。
事業の概要と主要要件
| 項目 | 内容 |
| 予算規模 | 令和8年度(2026年度)予算案:70億円 |
| 補助率 | 原則3分の2(特別区分A〜Eのいずれかに該当する場合は4分の3) 定置用蓄電池は3分の1(特別区分C:インフラ空間への導入に限る) |
| 補助上限 | 1事業あたり最大10億円 |
| 公募期間 | 令和8年6月25日〜9月30日正午 第1回締切 7月13日/第2回締切 9月4日/最終締切 9月30日 ※年度後半に二次公募を実施予定 |
| 対象設備 | フィルム型ペロブスカイト太陽電池で 一定の性能要件を満たすもの |
| 対象事業の要件 | 設置場所の追加的な耐荷重が10kg/㎡以下相当 |
| 電力の扱い | 自家消費率50%以上 (FIT・FIP制度の活用は不可) |
| 事後義務 | 事業完了年度の翌年度から3年間、 発電量・CO2削減効果等の事業報告書を提出 |
| 審査上の要点 | モデル事業として同種の建物への横展開性の説明 |
補助率が4分の3となる「特別区分」
| 特別区分 | 内容 |
| A | 地域防災計画に位置づけられた避難施設、または業務継続計画に位置づけられた施設への導入(蓄電池の活用が必須) |
| B | GXリーグまたはSBTi認定取得済の目標と計画を提出でき、サプライチェーンの脱炭素化の一環として導入するもの |
| C | インフラ空間(道路、空港、港湾、鉄道等)への設置 |
| D | 設置場所の耐荷重が6kg/㎡以下相当で、耐火性の観点や固定において特別な施工を要しない屋根(金属屋根等)への設置 |
| E | 2029年度までに、同一主体が累計0.1MW以上の設置を計画しており、その計画を提出できるもの |
補助金検討にあたっての注意事項
本事業の対象はフィルム型に限られます。ガラス型ペロブスカイトやカルコパイライト(CIGS)は対象外となりますので、これらを用いたBIPVは別の補助金の活用を検討する必要があります。
(内部リンク)ペロブスカイトとカルコパイライトの最新実証事業!補助金についても解説
見落とされがちなのが、表の最後にある「横展開性」です。この事業はモデル事業として位置づけられているため、単に自社の電気代を下げたいという申請では評価されにくくなります。類似用途の建物へ広がりうる先進事例であることを申請段階で証明する必要があり、この作業が実質的な準備の中心になるでしょう。
また、本補助事業で得られる環境価値のうち、需要家に供給した電力量に紐づくものは需要家に帰属させることとされ、制限期間を経過するまでカーボン・クレジットやグリーン電力証書、非化石証書制度への登録はできません。RE100やSBT対応を導入動機とする場合は、この点を事業計画に織り込んでおきましょう。
併用を検討すべき周辺制度
BIPV単体ではなく、周辺の補助金制度と組み合わせて全体の補助額を最大化するのが効果的です。
令和8年度の募集期間が終了している補助金もありますが、来年度も同様の補助金公募がある可能性が高いため、今後の動向に注視していきましょう。
| 制度 | 概要 | BIPVとの関係 |
| ストレージパリティ達成に向けた太陽光発電導入支援事業 (環境省) | 自家消費型太陽光+蓄電池 | ペロブスカイト導入支援事業との併用可能性あり |
| 建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業 (環境省) | 建築物のZEB化支援 | BIPVをZEB達成手段の一部として、建物全体の補助スキームに乗せる |
| 業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業) (環境省) | 既存建築物の脱炭素改修支援 | 外壁改修とあわせたBIPV導入の受け皿になり得る |
| 自治体の上乗せ補助 例:東京都 「ZEB化・排熱利用設備導入促進事業」 | 自治体独自の助成制度 | 国庫補助との併用可否は制度ごとに異なるため、事業地の制度を個別確認 |
ストレージパリティ補助金については、こちらの過去記事をご参照ください。
(内部リンク)
【2026年最新】ストレージパリティ補助金を活用!PPAで太陽光と蓄電池を自己投資ゼロで導入できる?
自治体独自の制度としては、実証事業を対象に最大500万円を補助する福岡県の例もあります。事業地によって使える制度は大きく変わりますので、早い段階で確認しておきましょう。
(内部リンク)福岡県 最大500万円補助!ペロブスカイト等の実証を支援
(内部リンク)ペロブスカイトとカルコパイライトの最新実証事業!補助金についても解説
また、駐車場を活用したソーラーカーポートは、建物の外皮を使うBIPVと敷地内で併用しやすい設備です。あわせて検討する価値があります。
(内部リンク)
環境省 ソーラーカーポート等導入に最大1億円の補助!
(内部リンク)
【2026年最新】補助金でソーラーカーポートを設置!メリットと費用を徹底解説

押さえておくべき補助金活用の原則

1.二重補助は認められない
複数制度を併用する場合、同一設備・同一費目への二重補助は認められないのが原則です。
ストレージパリティ補助金や自治体補助金など、例外もありますので、詳細は補助金執行団体の公募要項を確認してください。
2.交付決定前の着工は不可
一般的な補助金事業は「公募」⇒「審査」⇒「採択決定」⇒「交付決定」と段階を踏んで進みます。交付決定前に工事の着工や部材の発注行為をすると、原則として補助対象外となってしまいます。
つまり、設計・発注のスケジュールを公募期日に合わせて組み、補助金のスケジュールに合わせて工程を設定する必要があるということです。
3.今の補助率が続く前提で計画を立てない
量産が進んで製品単価が下がれば、補助率が引き下げられる、もしくは補助金そのものが廃止される可能性があります。将来の計画に関しては、現行の補助率をあてにした投資回収計画を作成するのは危険です。
補助金が得られなかった場合の投資回収計画も作成し、脱炭素に向けて必要なコストである等、それでも実行する価値があることのコンセンサスを関係者間において得ておく必要があるでしょう。
裏を返せば、補助率の高い今こそが導入の好機とも言えます。早期に導入した企業には、実績を対外的に打ち出せる先行者利益も生まれます。
BIPV導入に向けての逆算スケジュール
BIPVの採否は基本設計段階で確定する必要があります。後付けのBAPV(建物設置型/後付け型)であれば、竣工後でも設置できますが、BIPVは建材そのものです。実施設計が固まった後に検討を始めると、以下がすべて手戻りになります。
- 外装の割付・目地・寸法の設計
- 下地、防水の納まり
- 風圧力・地震時の荷重検討
- 配線ルート、パワーコンディショナや接続箱の設置スペース、EPSの容量
- 点検・更新時の動線
- 防火・避難、開口部の採光や排煙との整合

【推奨】竣工から逆算した意思決定のモデルケース
参考として、6ヵ月程度の工期を想定した、中規模施設への導入を想定したモデルケースを提示します。
| 時期の目安 | フェーズ | 発注者が決めること |
| 竣工の30~24ヵ月前 | 企画・基本構想 | 電力需要データの整理 自家消費率の見通し 概算予算 補助金メニューの目星 |
| 24〜18ヵ月前 | 基本設計 | BIPVの採否 設置面(面積・方位) BEI試算 |
| 18〜12ヵ月前 | 実施設計 | 構造・電気・防火の詳細検討 メーカー選定 保証条件の確認 詳細見積 |
| 12ヵ月前後 | 確認申請・補助金申請 | 公募期日への対応 |
| 12〜6ヵ月前 | 発注・製作 | 供給リードタイムの確保 系統連系申込 |
| 6ヵ月前〜 | 施工・検査 | 施工品質確認 モニタリング体制の構築 |
補助金の公募期日は動かせません。そして交付決定前に着工すれば対象外になります。この二点だけでも、設計スケジュールの自由度はかなり制約されると考えておくべきです。
さらに補助事業は原則として単年度であり、交付決定後に発注・着工したうえで、その年度の1月末日までに事業を完了させる必要があります。
上記のモデルケースは建物側の工程を示したものですので、BIPV工事をどの年度に収めるのかを、基本設計の段階で補助金のスケジュールと突き合わせて判断しておくことになります。
2027年〜2028年竣工の実例が進行中
各社の量産体制や実証プロジェクトの動向を踏まえると、次世代太陽電池によるBIPVの導入は2027年〜2028年竣工の案件から始まります。
国内でも、実装を予定したプロジェクトがすでに進行中です。基本設計に着手するのはまさに今というタイミングです。
(内部リンク)
パナソニック ガラス型ペロブスカイト太陽電池の開発・実証へ
(内部リンク)
阪急阪神不動産 新本社ビルにペロブスカイト 国内初!
なお、BIPVの実装は海外で先行しています。競合他社の動きを見るうえでも、海外の最新動向は押さえておきたいところです。
(内部リンク)
【2026年最新】ペロブスカイト太陽電池の海外動向をご紹介!

まとめ

BIPVをめぐる環境は、2026年度を境に確実に変わります。これまで「技術は面白いが、制度も供給も未整備」だった状況が、急速に解消へ向かっています。
政府は2040年度までに「ペロブスカイト太陽電池20GW(ギガワット)」の導入目標を掲げており、市場そのものも急拡大が見込まれています。
年々ハードルが高くなる建物の省エネ基準に合わせて、新築や大規模改修を控える企業においてはZEB化を前提に検討し、基本設計の段階でBIPVを選択肢として俎上に載せておくことをお勧めします。 SolarTechLifeでは、次世代太陽電池とBIPVをめぐる制度・技術の最新動向を、今後も実務者目線で追いかけていきます。
[ 本ページにはプロモーションが含まれています ]


