電力価格の高騰や災害リスクの増大など、近年の事業活動においてエネルギー調達の問題は避けて通れません。また、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減のため、再生可能エネルギーの導入も政府によって強く推進されています。
これらの課題を解決する有効な手段のひとつとして、蓄電池の導入があります。
蓄電池を導入することによって、電力コストの削減や企業のBCP対策、再生可能エネルギーの導入促進などさまざまな効果が期待できます。
また、蓄電池の普及は国のエネルギー政策の重点課題であるため、政府や自治体によるさまざまな補助金制度が生まれており、導入費用を大幅に削減できるチャンスが生まれています。
本記事では、業務・産業用蓄電池の最新情報を解説します。
自社のニーズに合わせて最適な補助金制度を活用し、蓄電池導入を成功させるためにぜひお役立てください。
業務・産業用蓄電池の導入拡大は国の重要政策

業務・産業用蓄電池とは、企業や工場、商業施設などに設置される大容量の蓄電池システムのことです。その導入拡大は、国のエネルギー政策にとって非常に重要な課題となっています。
日本は「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)」を目指しています。この目標を達成するには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを加速度的に増やす必要があります。
しかし、再生可能エネルギーは天候によって発電量が変わるため、電気の供給が不安定になりがちです。電気は、使う量と作る量を常に同じにしなければならないというルール(同時同量の原則)があるためです。
蓄電池があれば、再生可能エネルギーで発電した電気を貯めておき、必要な時に使うことができます。
つまり、蓄電池は再生可能エネルギーの弱点を補い、安定供給を助ける重要な役割を担うのです。そのため、国は業務・産業用蓄電池の新設に対して補助金制度などのメリットを用意し、導入を積極的に支援しています。

業務・産業用蓄電池を設置するメリット

企業や団体が業務・産業用蓄電池を設置する効果としては、先述のような国策に従った環境理念のためだけではありません。その他のメリットについて具体的に解説します。
業務・産業用蓄電池のメリット①ピークカット
大型の蓄電池を活用してピークカットを実施することによって、電気料金を大幅に削減できる可能性があります。
電力を蓄電池に貯めておき、電力消費が多い時間帯に放電することで最大電力(ピーク)を抑制し契約電力を下げることをピークカットと言います。
また、太陽光発電の余剰電力や夜間など電力料金の安い時間帯の電力を蓄電池に充電しておき、電力消費が多い時間帯に放電することで、さらなるコスト削減効果を生み出すことも可能です。
業務・産業用蓄電池のメリット②BCP対策
BCP対策としての蓄電池導入は、企業の事業継続性を高める上で非常に有効な手段となります。大規模災害などによる停電時にも、蓄電池に貯めていた電力を利用することで事業を継続できる可能性があります。
バックアップ電源として蓄電池を導入することで停電時でも一定時間の電力供給を確保し、事業の中断や損害を最小限に抑えることができるでしょう。
業務・産業用蓄電池のメリット③太陽光発電との連携

日中に太陽光発電で発電した電力の余剰分を蓄電池に貯めておくことで、電力消費量の多い時間帯や夜間など、太陽光発電ができない時間帯にも再生可能エネルギーを利用できます。これにより、自家消費率を高めて電力会社からの購入電力を削減できます。
太陽光発電と蓄電池の連携は、再生可能エネルギーの有効活用を促進し、企業の脱炭素化にも大きく貢献します。その結果として、CO2排出量削減を目標とする企業のサプライチェーンに選定されたり、環境に配慮した製品を求める消費者にも選ばれやすくなるなど、企業経営の安定にもつながるでしょう。

業務・産業用蓄電池の補助金
業務・産業用蓄電池の補助金について、国と自治体の補助金に分けてご紹介します。

【経済産業省資源エネルギー庁】
家庭用蓄電池等の分散型エネルギーリソース導入支援事業費補助金
(家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業)
補助金執行団体 | SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ) |
補助対象 | 高圧受電施設に設置される20kWhを超える蓄電容量の蓄電池 |
補助率・補助金額 | 4.8万円/kWhを基準として、補助対象設備費と工事費の最大3分の1 |
この補助金事業は「DR(デマンドレスポンス)」に対応する蓄電池の導入を支援する目的で用意されています。
電力の需給状況に応じて消費量を調整するデマンドレスポンスに対応することで、電力需給がひっ迫している時だけでなく、再生可能エネルギーの発電量が多すぎる場合の出力制御対策としても蓄電池を活用できます。
国は電力の安定供給に貢献する蓄電池の導入を後押ししており、蓄電池単独での補助金申請が可能であることが魅力です。
参照:一般社団法人環境共創イニシアチブHP(情報は令和5年度補正予算のものです)


【環境省】
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金
(民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業)
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
補助金執行団体 | 一般財団法人環境イノベーション情報機構 |
補助対象 | 4,800Ah・セル(17.76kWh)以上の蓄電池 |
補助率・補助金額 | 定額4万円/kWh+工事費等の3分の1 |

国は、太陽光発電設備や蓄電池の価格を下げ、地域での脱炭素化と災害対策を同時に進めるため屋根などを活用した自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池の導入を支援しています。
この補助金の目標は「ストレージパリティ」の達成です。ストレージパリティとは、太陽光発電を導入する際に蓄電池も一緒に導入した方が経済的にメリットがある状態を指します。
現在、蓄電池への補助金は、太陽光発電設備とセットで導入する場合にのみ適用されます。
導入方法としては
「自己投資」
「オンサイトPPA」
「リース」
の3つの方法から選ぶことができます。
参照:一般財団法人環境イノベーション情報機構HP(情報は令和5年度補正予算のものです)

建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業
補助金執行団体 | SERA(一般財団法人静岡県環境資源協会) SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ) |
補助対象 | 再生可能エネルギー由来の電力を蓄える蓄電池 |
補助率・補助金額 | 設備費+工事費の最大3分の2 |

「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」とは、建物の断熱を強化し照明や空調などの設備を高効率化した上で、太陽光発電や蓄電池の導入によって実質的な消費エネルギーを差し引きで実質ゼロにする取り組みです。
この補助金を受けるには建物のZEB化が必須条件となっており、蓄電池単独での申請はできません。
ZEB化の達成度合いによって補助率は異なりますが、最高ランクの『ZEB』認証を取得できれば、補助率は1/2(既存建物の改修の場合は2/3)となり、高額な補助金を受けられる可能性があります。
こちらの補助金については、既出記事で詳しく解説していますので併せてお読みください。
ZEBのメリットとデメリットは?活用できる補助金も詳しく解説!
参照:一般財団法人静岡県環境資源協会HP(情報は令和6年度予算のものです)

【東京都】
地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業
助成対象 | 助成率・助成金額 |
下記条件を満たす蓄電池 ・地産地消型再生可能エネルギー発電設備と併せて設置 ・電力系統からの電気より再生可能エネルギー発電設備から電気を優先的に蓄電 ・「再生可能エネルギー発電設備の発電容量」×「5時間」までの蓄電池容量 | 中小企業、学校法人、公益財団法人、医療法人、社会福祉法人等: 3/4以内または15万円/kWhの少ない額 (再エネ発電設備同時設置:上限2億円・蓄電池単独設置:上限900万円) その他事業者: 2/3以内または13万円/kWhの少ない額 (再エネ発電設備同時設置:上限2億円・蓄電池単独設置:上限800万円) |
この事業は、東京都内で作られた再生可能エネルギーを都内で消費する「地産地消」型の発電設備などを設置する事業が対象です。東京都内に蓄電池を単独で設置する場合も対象となります。ただし、FIT/FIP制度を利用して電気を売る場合は対象外です。
また、発電設備を東京都外(ただし東京電力エリア内に限る)に設置し、そこで発電した電気の持つ環境価値(CO2を排出しないという価値)を、都内の施設で利用する場合も対象となります。

【その他の自治体】
東京都以外にも、蓄電池の設置に補助金・助成金を用意している自治体は全国に多数存在します。しかも、その多くは国の補助金と併用が可能です!
まずは事業所のある県や市区町村に問合せしてみることをお勧めします。
【自治体補助金の例(情報は令和6年度のものです)】
横浜市太陽光発電導入支援助成金
令和6年度神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金
豊田市カーボンニュートラル創エネ促進補助金

まとめ

業務・産業用蓄電池の導入は、電力コスト削減、BCP対策、再生可能エネルギーの有効活用など、多くのメリットをもたらします。
国や自治体も導入を支援しており、様々な補助金制度が用意されています。
補助金情報は年度替わりに公募されることが多いので、各省庁や自治体のウェブサイトなどを定期的に確認しましょう。 本記事で紹介した情報を参考に、自社のニーズに合った補助金制度を活用し、蓄電池導入を成功させてください。

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