近年、再生可能エネルギーへの関心が高まる中、「営農型太陽光発電」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは、農地で農業を続けながら、その上部空間に太陽光パネルを設置して発電を行う、新しい農業の形です。
この記事では、農業経営の安定化や地域活性化、そして地球環境問題への貢献にもつながる可能性を秘めた注目の営農型太陽光発電について、基本的な仕組みとメリット・デメリット、導入にあたっての注意点、さらには活用できる補助金制度や実際の導入事例まで詳しく解説します。
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営農型太陽光発電とは?

営農型太陽光発電は、農林水産省の定義によれば、「一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う事業」とされています。
分かりやすく言い換えると、農地の上部空間に太陽光パネルを設置し、農業生産と太陽光発電を一つの土地で同時に行う取り組みです。この仕組みは、太陽光(ソーラー)を農業と発電で分け合う(シェアリング)ことから、「ソーラーシェアリング」とも呼ばれています。
つまり、この取り組みの大前提となるのは、「農業の継続」です。あくまで主役は農業であり、発電はそれを支え、付加価値を生み出すためのものであることに注意が必要です。
この営農型太陽光発電は年々注目度が高まっており、農林水産省によると、営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数は、令和4(2022)年度までに累計で5,351件、その発電設備下の農地面積は累計で1,209.3ヘクタールに達しています。これは、農業とエネルギーの両立を目指す動きが着実に広がっていることを示しています。
出典:農林水産省資料「営農型太陽光発電について」P.4
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-60.pdf
なぜ営農型太陽光発電が推進されるのか?
営農型太陽光発電が国や自治体によって推進され注目を集めている背景には、いくつかの重要な理由があります。
再生可能エネルギー導入目標の達成
日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げています。この目標達成のためには、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入をさらに大幅に拡大する必要があります。
営農型太陽光発電は、広大な面積を持ちながら十分に活用されていない農地の上部空間を有効活用することで、新たな発電設備の設置場所を確保し、再生可能エネルギーの導入拡大に大きく貢献する手段として期待されています。
食料安全保障とエネルギー自給率の向上
食料自給率とエネルギー自給率の向上は、日本の重要な政策課題です。営農型太陽光発電は、一つの土地で農業生産とエネルギー生産を両立させることを可能にします。
これにより、国内の食料自給基盤を維持・強化しつつ、エネルギーの国内生産比率を高めることにつながる可能性があります。

また、地域で発電した電気を地域で消費する「エネルギーの地産地消」を進めることで、地域のレジリエンス強化にも貢献します。さらに、分散型電源として、災害発生時には非常用電源としての役割も期待されています。
農業者の所得向上と経営安定化
多くの農業経営者は、不安定な天候による収穫量や農産物価格の変動、後継者不足や高齢化といった課題に直面しています。営農型太陽光発電を導入することで、農作物の販売収入に加えて、発電した電気の売電による安定的な収入を得ることができます。
また、発電した電気をビニールハウスの暖房や農業機械の動力などに自家消費することで、エネルギーコストの削減にもつながる可能性があります。
耕作放棄地の有効活用と地域活性化
営農型太陽光発電は、後継者不足や高齢化などで急増している耕作放棄地を再生し活用する有効な手段となり得ます。発電事業による収益を見込むことで、これまで活用が難しかった土地での営農再開を後押ししたり、新たな担い手を呼び込んだりするきっかけになります。
営農型太陽光発電の注意点

営農型太陽光発電を行うには、農地法に基づく農地転用許可(一時転用)が必要です。原則として許可期間は3年以内ですが、条件によっては最長10年まで認められることもあります。
期間満了後も事業を継続する場合は再許可申請が必要です。許可の条件として、農作物の品質に著しい劣化がないこと、収量が地域の平均収量と比較して2割以上の減収がないことが求められます。
これらの条件を満たせない場合や、年次報告を怠った場合には、一時転用許可が取り消される可能性があり、設備の撤去と原状回復が必要になります。

営農型太陽光発電のメリット・デメリット

営農型太陽光発電の導入を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解し、農地の現状や導入の目的に照らし合わせて判断することが重要です。
営農型太陽光発電のメリット

農業者にとってのメリット
- 売電収入による経営の安定化と所得向上
- 自家消費によるエネルギーコスト削減
- 遊休農地の有効活用
- 適度な遮光効果による作物生育への好影響
- 設備の支柱などを活用した新たな栽培方法の開発
既存の農地に営農型太陽光発電を導入することで、FIT制度を利用した売電収入や自家消費による電気料金削減が見込めます。これにより、農業経営の安定化に大きく貢献し、新たな収益源として遊休農地の再利用も検討可能になります。
さらに、太陽光パネルが適度な日陰を作ることで作物の高温障害を抑制する効果や、支柱を防風ネットなどに活用して資材コストを削減できる可能性もあります。
地域・社会にとってのメリット
- 再生可能エネルギー導入拡大と脱炭素化への貢献
- 耕作放棄地の活用・抑制による国土保全
- 新たな産業創出や雇用の可能性
- エネルギーの地産地消、災害時の非常用電源
営農型太陽光発電は、再生可能エネルギーの導入拡大と脱炭素化に貢献するとともに、耕作放棄地の活用や抑制を通じて国土保全にも寄与します。
さらに、新たな産業創出や雇用の可能性を生み出し、エネルギーの地産地消や災害時の非常用電源としての役割も期待されています。
営農型太陽光発電のデメリット

- 初期費用と維持管理コストが大きい
- パネルの影による作物収量・品質低下リスク
- FIT期間終了後の売電価格の変動リスク
- 営農の継続義務がある
太陽光パネルや支柱、パワーコンディショナーなどの設備導入には、それなりの初期投資が必要です。また、定期的なパネルの清掃や点検、機器のメンテナンスなどの維持管理コストも継続的に発生します。ただし、後述する補助金制度を活用することで、初期費用の負担を軽減できる場合があります。
作物の種類や地域の気候条件に合わせて、太陽光パネルの枚数、配置間隔、高さ、角度を最適に設計することが重要です。設計を誤ると作物の生育不良につながるため、日陰に強い作物の選定や、施肥設計の見直し、栽培時期の調整などの工夫が不可欠です。
FIT(固定価格買取制度)を利用して売電する場合、買取価格は一定期間保証されますが、期間終了後は売電収入が大幅に少なくなるリスクも考慮する必要があります。
営農型太陽光発電では、適切な営農を継続する義務が最も重要です。収量基準を満たせない、または適切な管理が行われていないと判断された場合、許可が取り消され、多額の費用をかけて設置した設備を撤去する必要が生じ、事業継続に重大なリスクが伴うことを留意しましょう。

【2025最新】営農型太陽光発電に使える補助金

営農型太陽光発電の導入における大きなハードルの一つが初期費用ですが、この取り組みを推進するため、国はいくつかの補助金制度を用意しています。
ここでは、2025年4月時点で活用できる可能性のある主な補助金を紹介します。
農林水産省の補助金
みどりの食料システム戦略推進交付金のうち地域循環型エネルギーシステム構築事業
農林漁業を核とした循環経済先導地域づくり
補助率: 対象経費の原則1/2以内
農山漁村における再生可能エネルギーの導入を通じて、エネルギーの地産地消や地域内経済循環を促進し地域の活性化を図る事業を支援します。営農型太陽光発電設備の導入も対象となります。
参照:農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/yosan.html#yosan
環境省の補助金
地域共生型の太陽光発電設備の導入促進事業(営農地・水面等)
補助率: 対象経費の原則1/2以内
生物多様性等の自然環境に配慮し、営農地やため池などの水面上を活用した地域共生型の太陽光発電設備の導入を支援する事業です。
参照:一般社団法人環境技術普及促進協会(ETA)
https://eta.or.jp/offering/2025/solar/index.php
これらの補助金を活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できる可能性があります。HPなどで常に最新の情報を得て、活用を積極的に検討しましょう。

営農型太陽光発電補助金を活用した実例紹介
実際に補助金を活用して営農型太陽光発電を導入し、農業経営と発電事業を両立させている事例をいくつかご紹介します。
これらの事例から、営農型太陽光発電は、地域の気候や土壌、栽培する作物、経営形態などに合わせて、多様な形で展開できる可能性を持っていることがわかります。
参照:農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-60.pdf
五平山農園(千葉県いすみ市)
発電出力:49.5kW
発電電力量:約5万3千kWh/年
発電設備下部の農地:10a(ブルーベリーを栽培)
温暖な気候の千葉県で、ブルーベリー栽培と太陽光発電を両立。ブルーベリーは比較的日陰にも適応しやすく夏場の高温抑制効果も期待できるため、営農型太陽光発電に適した作物の一つと考えられます。売電収入と観光農園としての収入により、経営の多角化を図っています。
株式会社宝塚すみれ発電(兵庫県宝塚市)
発電出力:46.8kW
発電電力量:約5万kWh/年
発電設備下部の農地:9a(さつまいもを栽培)
市民が利用する農園の上部空間を活用した事例です。発電事業の収益を市民農園の運営費に充てるなど、地域コミュニティへの貢献も視野に入れています。さつまいもなど、比較的栽培が容易で、ある程度の日陰にも耐える作物が選ばれています。エネルギーの地産地消と地域活性化を結びつけたモデルケースと言えます。
秋葉慶次氏(山形県東根市)
発電出力:①②合計約80kW
発電電力:量①約3万kWh/年、②約8万kWh/年
発電設備下部の農地:①水稲18a ②わらび30a
水田という、従来は太陽光発電設備の設置が難しいと考えられていた場所への導入事例です。稲作だけでなく、比較的日陰に強い「わらび」を栽培するなど、土地の特性やパネル下の環境に合わせた作物選定を行っています。水田への導入は、技術的な課題もありますが、国内の広大な水田地帯での再生可能エネルギー導入ポテンシャルを示す事例として注目されます。
まとめ

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農業経営の安定化、再生可能エネルギーの導入促進、耕作放棄地の活用など、多くの社会的課題解決に貢献する大きな可能性を秘めています。
単なる発電事業としてだけでなく、「持続可能な農業」と「クリーンなエネルギー社会」の両立に貢献する重要な選択肢です。
この記事が、営農型太陽光発電への理解を深め、導入検討の一助となれば幸いです。
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