「電気代の高騰が経営を圧迫している」
「脱炭素経営やESGへの対応が求められているが、何から始めるべき?」
このような課題を抱える事業者様にとって、太陽光発電の導入は今や最も効果的な解決策の一つとなっています。
しかし、導入には高額な初期投資が必要となり、投資回収にも時間がかかることが懸念点です。その課題を解決し導入を強力に後押しするために、2025年度10月から屋根設置太陽光発電の「初期投資支援スキーム」という新しい制度がスタートしています。
この記事では、新しい「初期投資支援スキーム」の詳細、そして従来制度との比較による具体的な投資回収シミュレーションまで、事業者様が知りたい情報を解説します。

投資回収を加速させる新制度「初期投資支援スキーム」とは?

売電型の太陽光発電の導入にあたっては、年々下落する買取価格に対して初期投資の負担が大きいことが課題となっています。この課題を解決するため、経済産業省資源エネルギー庁が新たに開始するのが屋根設置太陽光発電の「初期投資支援スキーム」です。
早期の投資回収を支援し、屋根設置の導入を加速
本制度の目的は、「屋根設置太陽光発電の導入を加速するため、発電事業者の早期の投資回収を支援する」ことにあります。
特に、電力系統(電力網)への負荷が小さい屋根設置型の太陽光発電を増やすことで、国民全体の負担(再エネ賦課金)を抑制しつつ、再生可能エネルギーの普及を促進する狙いがあるとされています。
FIT価格の歴史的下落と、新制度がもたらす「大きな転換点」
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を国が定める価格で一定期間、電力会社が買い取ることを義務付ける制度です。FIP制度は、FIT制度のように固定価格ではなく、市場価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せして売電する制度で、主に大規模な発電設備が対象となります。
今回の新制度を理解するために、まずはFIT制度開始からの買取価格の推移を振り返ってみましょう。以下の表は、屋根設置の事業用太陽光発電(10kW以上)のFIT価格の変遷です。
| 認定年度 | FIT価格(円/kWh) |
| 2012年度 | 40.0円 |
| 2013年度 | 36.0円 |
| 2014年度 | 32.0円 |
| 2015年度 | 27.0円 |
| 2016年度 | 24.0円 |
| 2017年度 | 21.0円 |
| 2018年度 | 18.0円 |
| 2019年度 | 14.0円 |
| 2020年度 | 13.0円 |
| 2021年度 | 12.0円 |
| 2022年度 | 11.0円 |
| 2023年度 | 10.0円 |
| 2024年度 | 9.5円 |
| 2025年度9月まで | 11.5円 |
| 2025年度10月から(新制度) | 19.0円(1~5年目)8.3円(6~20年目) |
この推移で明らかな通り、FIT価格は制度開始以来一貫して下落してきました。これは、太陽光パネルの低価格化や技術革新に伴う設置コストの低下を反映し、国民負担を抑制するための当然の流れですが、単価が高額であった初期に比べると現在では投資への魅力が薄れているのが現状です。
しかし、2025年度下期から始まる「初期投資支援スキーム」は、この流れに逆行し、導入初期の買取価格を一時的に大幅引き上げするという、過去に例のないアプローチを取っています。これは、単なる価格改定ではなく、国が太陽光発電、特に屋根設置の導入を強力に後押ししようとする政策の大きな転換点と言えるでしょう。
「階段型」の買取価格で初期の売電収入を最大化
この制度の最大の特徴は、前述の通りFIT制度における売電価格が「階段型」に設定される点です。

今回の新制度では、このFITにおける買取価格(基準価格)が、事業用(10kW以上の屋根設置)の場合、以下のように変更されます。
- 運転開始後1〜5年目:19円/kWh
- 運転開始後6〜20年目:8.3円/kWh
2025年度上期のFIT価格11.5円/kWhと比較しても、最初の5年間の買取価格がいかに高い水準であるかがわかります。
これにより、導入初期のキャッシュフローが大幅に改善され、投資回収年数の大幅な短縮が期待できるのです。
申請期限に注意!
この新しいスキームの適用を受けるためには、認定時期と申請期限に注意が必要です。
- 対象:2025年10月1日以降に認定を受ける事業
- 申請期限日:2025年12月12日(金)
申請は電子申請が原則であり、GビズIDの発行などに時間がかかる場合があるため、検討している事業者様は一日も早く準備を進めることをお勧めします。

【投資回収シミュレーション】新制度でこれだけ変わる!
では、実際にこの「初期投資支援スキーム」を活用すると、投資回収期間はどれくらい短縮されるのでしょうか。具体的なモデルケースでシミュレーションし、従来制度と比較してみましょう。
【シミュレーション共通条件】
- 設置場所:工場の屋根
- システム容量:100kW
- 初期費用:2,000万円(20万円/kW)
- 年間発電量:110,000kWh/年(1,100kWh/kW・年)
- 自家消費率:50%(自家消費量:55,000kWh/年、余剰売電量:55,000kWh/年)
- 購入電力単価:30円/kWh
- O&M費用(運用保守とメンテンナンス費用):30万円/年
【制度別 投資回収シミュレーション比較表】
| 項目 | 従来制度(FIT価格 11.5円/kWh) | 新制度(初期投資支援スキーム) |
| ①電気代削減額/年 | 165万円 | 165万円 |
| ②売電収入/年 | 63.25万円 | 【1~5年目】 104.5万円【6年目以降】 45.65万円 |
| ③年間O&M費 | 30万円 | 30万円 |
| ④年間利益 (①+②-③) | 198.25万円 | 【1~5年目】 239.5万円【6年目以降】 180.65万円 |
| 投資回収年数 | 約10.1年 | 約9.4年 |
【新制度の投資回収年数 計算内訳】
- 5年間の累積利益:239.5万円/年 × 5年 = 1,197.5万円
- 5年後の投資残額:2,000万円 – 1,197.5万円 = 802.5万円
- 残額の回収年数:802.5万円 ÷ 180.65万円/年(6年目以降の利益) ≒ 4.4年
- 合計投資回収年数:5年 + 4.4年 = 9.4年
上記のシミュレーションでは、従来制度で約10. 1年かかっていた投資回収が、新制度では約9. 4年に短縮されました。
「思ったより短縮されていない?」と感じるかもしれません。しかし、このシミュレーションはあくまで一例です。1〜5年目の売電比率が高い(自家消費が少ない)事業モデルの場合、その差はさらに顕著になります。

例えば、1〜5年目の自家消費率が30%(売電率70%)の場合を計算してみましょう。
- 従来制度の場合
年間利益: 約201.1万円
投資回収:約9.9年
- 新制度の場合:
1~5年目の年間利益: 約263.5万円
6年目以降の年間利益: 約162.1万円
投資回収:約8.1年
このように、1〜5年目の売電に回す電力が多ければ多いほど、初期の高価格買取の恩恵が大きくなり、投資回収が大幅に早まります。
6年目以降は売電収入が減るため、電力需要のピークを昼間に持ってくるような生産シフトの変更や、大型蓄電池の導入などで自家消費率を上げることが投資効果を最大化するポイントになります。
さらに、国や自治体の補助金や、「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」などの税制優遇を活用することで、初期投資額そのものを圧縮でき、回収期間を5〜7年、あるいはそれ以下に短縮することも十分に可能です。

なぜ事業者が太陽光発電を導入すべきなのか?3つの経営メリット
新制度によって導入のハードルが下がった今、改めて自家消費型太陽光発電がもたらす経営上の3つの大きなメリットを確認しましょう。

電気料金の劇的な削減と将来的な価格変動リスクの回避
最大のメリットは、何と言っても電気料金の削減です。屋根置きFITは一定の自家消費を前提としていますので、自社で発電した電気を自社で消費することで、電力会社から購入する電力量を大幅に削減できます。
近年、燃料価格の高騰や再エネ賦課金の上昇などにより、電気料金は高騰し続けています。太陽光発電は、一度設置すれば20年以上にわたって燃料費ゼロで電気を生み出すため、長期的に安定したエネルギーコストを実現し、将来の電気料金の価格変動リスクから自社の経営を守る強力な盾となります。
ESG経営への貢献と企業価値の向上
世界的に脱炭素化への動きが加速する中、企業経営においても環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を重視するESG経営が不可欠となっています。
太陽光発電の導入は、CO2排出量を削減し、再生可能エネルギーの利用を促進する具体的なアクションであり、企業の環境に対する姿勢を社内外に示す絶好の機会です。これにより、金融機関からの融資や評価、サプライチェーンにおける取引先からの選定、さらには優秀な人材の確保においても有利に働くなど、企業価値の向上に直結します。
BCP(事業継続計画)対策としての非常用電源確保
地震や台風といった自然災害による大規模停電は、事業活動を停止させてしまう大きなリスクです。太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせることで、停電時にも自立して電力を確保できる非常用電源として機能します。
これにより、災害時でも最低限の事業活動を継続したり、重要な設備やデータを保護したりすることが可能となり、企業のレジリエンス(強靭性)を高めるBCP対策として非常に有効です。

導入前に確認!制度の注意点(Q&A)
最後に、本制度を利用する上での注意点をまとめます。

Q. 買取価格が下がる6年目以降に、FIT制度をやめて完全自家消費+民間事業者との契約での売電に切り替えることはできますか?
A. 原則として、一度FIT/FIP認定を受けた設備は、期間中に制度から離脱することは認められていません。
この「階段型の価格設定」は、20年間の売電収益をトータルで確保できるように設計された制度であるため、期間中の契約は維持する必要があります。
Q. 買取価格が下がる6年目以降に、屋根から地上へ設備を移設することはできますか?
A. できません。
本制度はあくまで「屋根設置太陽光発電」の導入を促進するためのものであるため、調達期間/交付期間中に地上設置へ変更することは認められていません。
Q. 将来、パネルを廃棄する際のルールはありますか?
A. 適切な廃棄が法律で義務付けられています。
特に10kW以上の事業用太陽光発電設備は、FIT/FIP期間終了後の解体・撤去費用を外部に積み立てることが原則として義務化されています。これは、太陽光発電事業者が将来、発電設備の寿命を迎えた際に、パネルの解体・撤去・適正な処分にかかる費用を、あらかじめ国が指定する外部機関(電力広域的運営推進機関:OCCTO)に積み立てておくことを義務付ける制度です。
積立はFIT/FIPの買取期間(20年)が終了する10年前から開始され、電力会社が事業者に支払う売電収入から天引きされる形で行われます。この制度は、将来の不法投棄や放置を防ぎ、持続可能な再生可能エネルギーの普及を促す目的があります。FIT期間後半のキャッシュフローに影響を与える可能性があるため、導入時には事業計画に織り込んでおくことが重要です。
【積立金の計算例】
毎月の積立額 =発電電気量(kWh) × 解体等積立基準額(円/kWh)
基準額(円/kWh)はFIT調達価格や認定年度ごとに経済産業大臣が決定
(例: 結晶シリコン系で0.35円/kWh、FIT価格40円/kWhの場合1.62円/kWhなど)
例:設備容量100kW、年間発電量110,000kWh、基準額0.35円/kWhの場合
年間積立額 ≒ 38,500円(10年総額 ≒ 385,000円)

まとめ|今こそ屋根置き太陽光発電導入の絶好のチャンス!

本記事では、2025年度下期から始まる事業者向けの新しい支援制度「初期投資支援スキーム」を中心に、太陽光発電導入のメリットと投資回収について解説しました。
電気代の高騰が継続しつつも、事業者の脱炭素への責務が問われる今、太陽光発電への投資は単なるコスト削減策に留まらず、未来への持続的な成長を実現するための戦略的な一手となります。
この絶好の機会を逃さず、専門の事業者にご相談の上、貴社に最適な導入プランのシミュレーションを依頼してみてはいかがでしょうか。


