イラン情勢の緊迫化が世界のエネルギー市場に大きな波紋を広げています。これは、家庭や事業で使う電気・ガス料金に直結する深刻な問題となっています。
日本の原油は約94%を中東からの輸入に依存しています。原油を運ぶタンカーの交通の要衝であるホルムズ海峡の通行が困難になれば、燃料価格の高騰を通じて電気代・ガス代が上昇するという構図は、過去の石油危機でも繰り返されてきました。
すでにその兆候は現れています。UNCTAD(国連貿易開発会議)の公式集計によると、2月27日から3月9日までのわずか11日間で、原油価格が27%増、LNG(液化天然ガス)価格が74%増と急騰しました。物理的な供給途絶が起こる前に、価格高騰というかたちで私たちの生活や事業活動への直撃がすでに始まっているのです。
本記事では、イラン情勢が電気代に与える影響を整理した上で、家庭や企業が今取るべき具体的な対策を解説します。
(注)本記事は、2026年4月時点の公開情報・政府資料・報道を基に構成しています。価格や制度、需給状況は時期等の条件により大きく異なるため、個別の判断にあたっては最新情報の確認を前提としてください。
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ホルムズ海峡の危機が私たちの生活を直撃する理由

ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約33kmの狭い海峡で、世界の原油・LNG輸送の最重要ルートの一つとされています。
イラン情勢の悪化によってこの海峡の航路の安全保障が不安定になると、次のように段階を経て、国内の電気料金が高騰します。
- 原油・LNGの国際スポット価格の上昇
イランの地政学的緊張がホルムズ海峡の通航リスクを高め、輸送タンカーの海上保険料を押し上げて原油・LNGの国際スポット価格(市場買い付け価格)が上昇する。
- 燃料輸入コストの上昇
日本が輸入する原油の約9割、LNGの約2割はホルムズ海峡を経由するため、物理的な供給不足に陥り、直接的な燃料輸入コストも上昇する。
- 発電コストの高騰・電力市場価格の上昇
日本の発電電力量に占める火力発電(LNG・石炭・石油)の比率は依然として約70%超であり、電気料金は火力発電の燃料費に大きな影響を受けて高騰する。電力市場(JEPX)のスポット価格も燃料費を反映して上昇する。
LNGへの影響は限定的?
日本においてホルムズ海峡経由のLNG輸入量は全体の約6.3%にとどまり、主力の調達先はオーストラリア(約40%)となっています。この数字を見て「影響は限定的では?」とお考えの方も多いと思います。
しかし、LNGは国際的なスポット市場で取引されており、ホルムズ海峡の不安定化による国際価格の高騰は、調達ルートに関係なくLNG全体の価格を押し上げます。つまり、日本がオーストラリアから買うLNGの価格も上がるということです。
「在庫があるから大丈夫」の落とし穴
国は「電力・ガス会社はホルムズ海峡経由LNG輸入量の約1年分に相当する在庫(400万トン)を確保しており、すぐに電気が止まることはない」と説明しています。
しかし、この「1年分」という数字はホルムズ海峡経由分(全体の約6.3%)に対してのものです。LNG全体の在庫で見れば実質3週間程度しかなく、国際市場の混乱が長引けば、日本のエネルギー供給は決して楽観視できる状況ではありません。

この危機はいつまで続く? 電気代への影響は?

イラン情勢が長期化した場合、原油価格の高止まりと輸入コストの上昇が継続し、家計・企業の負担も長期にわたって続く見込みです。
ここで知っておきたいのが、電気代への反映には契約形態によってタイムラグがあるという点です。
- 固定単価契約の場合
多くの電力会社では、過去3ヵ月間の燃料調達価格の平均値を「燃料費調整額」として電気料金に反映する仕組みを採用しています。
つまり、現在の燃料高騰は、数ヶ月遅れて電気代に反映されることになります。「今月の電気代はそこまで上がっていないから大丈夫」と安心するのは早計です。
- 市場連動型の電気契約の場合
JEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格に連動するプランでは、燃料費の増減との相関関係が強く、影響は避けられません。
固定単価契約よりも急激な価格上昇リスクがある点に注意が必要です。
仮にイラン情勢が短期間で沈静化したとしても、すぐに燃料価格が安値に戻る見込みは薄いでしょう。施設の修復・復旧に時間がかかることに加え、一度高まった地政学的リスクプレミアム(紛争リスクを見込んだ上乗せ価格)はなかなか解消されないためです。
いずれのシナリオにおいても、電気代が上昇する方向に力が働いていることは間違いありません。

「昼は安くて夜は高い」電気の価格差に注目!

日本の電力市場では興味深い構造変化が起きています。
国内卸電力市場(JEPX)では、「昼間は安く、夕方以降は高額」という特徴が顕在化しつつあるのです。ここに、電気料高騰の影響を最小限に喰いとめるヒントがあります。
JEPX市場に見る電気の時間帯格差
昼が安い理由は、太陽光パネルの急速な普及にあります。晴れた日中は全国の太陽光発電所が一斉に発電するため、電力の供給が需要を上回り、価格がゼロ円近くまで下落するケースも珍しくありません。
夜が高い理由は、太陽が沈んで太陽光の発電量がゼロになるにもかかわらず、夕食の支度や帰宅後の生活で電力需要が増加するためです。この時間帯はコストの高い火力発電に依存せざるを得ず、燃料高騰の影響を受けて価格が急騰します。
最適解は「自家消費+蓄電」
この「昼安・夜高」の価格構造を踏まえると、「昼間に太陽光パネルで発電した電気を自家消費で使用し、使いきれなかった分を蓄電して高い夜間に使う」ことが、現在の電力市場において最も合理的な電気の使い方です。
そして、この戦略を実現するために活躍するのが蓄電池です。蓄電池があれば、昼間の安い電気を貯めておき、電気代が高い夜間や曇天時に使うことができるのです。

国も「太陽光+蓄電池」を全力で推進!

今回の中東危機は、国の再生可能エネルギー拡大方針の正しさを改めて裏付ける結果となりました。
第7次エネルギー基本計画が示す方向性
令和7年(2025年)2月に公表された第7次エネルギー基本計画では以下の目標が掲げられています。現状の約2倍以上に太陽光発電を拡大しようという、極めて野心的な計画です。
- 「再生可能エネルギーの主力電源化を徹底」する方針を明記
- 2040年度までに電力の4〜5割を再エネでまかなう目標(うち太陽光23〜29%)
(2023年実績:再エネ比率22.9%、うち太陽光は9.8%)

(参照)令和7年2月 資源エネルギー庁 エネルギー基本計画の概要
蓄電池は不可欠な要素に
第7次エネルギー基本計画では、蓄電池が再エネ拡大の不可欠な要素として明確に位置づけられました。前章で解説した「昼安・夜高」の問題を解決し、太陽光の電力を効率的に活用するには蓄電池が欠かせないためです。
日本のエネルギー政策は、「再エネを増やす」段階から「蓄電池で賢く使いこなす」段階へとフェーズが移行しています。インフラ整備は着実に進んでおり、家庭や企業が太陽光+蓄電池を導入するための環境はかつてないほど整ってきています。
国も各種の補助金を用意して導入を積極的に推進しています。
以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください⇨
(関連記事)【2026年最新】ストレージパリティ補助金を活用!PPAで太陽光と蓄電池を自己投資ゼロで導入できる?
(関連記事)【2026年最新】系統用蓄電池の補助金活用と3つのビジネスモデルを徹底解説!
(関連記事)【2026年最新】家庭用蓄電池の補助金最新動向

太陽光の初期投資がしやすくなる新制度
太陽光発電の導入を検討する際に最大のハードルとなるのが、初期費用の負担です。この課題に対応するため、FIT制度に新しい「初期投資支援スキーム」がスタートしました。
初期費用が高いという導入障壁を解消
従来のFIT/FIP制度では、認定時に決定された買取価格が10年間(住宅用)または20年間(事業用)一律で固定されていました。
2025年10月にスタートした新制度では、最初の数年間は高く買い取り、残りの期間は低く設定する階段型の価格設定が採用されています。投資回収を早めることで、太陽光パネルの設置をさらに推進させたいという国の方策です。
導入初期に高い売電収入が得られることで初期投資の回収(融資返済)が格段に楽になり、これまで資金面で導入を見送っていた個人や中小企業にとっても、太陽光発電を導入しやすくなる大きな転機となっています。
買取期間が終了した後は完全自家消費に切り替えることも可能ですので、まずはこの制度を利用して設置することも検討に値するでしょう。
| 区分 | 買取期間 | 初期買取価格 | 残期間買取価格 |
| 住宅用 (10kW未満) | 10年間 | 開始4年間 24円/kWh | 残6年間 8.3円/kWh |
| 事業用・屋根設置 (10kW以上) | 20年間 | 開始5年間 19円/kWh | 残15年間 8.3円/kWh |
詳細は当サイトの解説記事をご覧ください⇨
(関連記事)太陽光発電の投資回収を加速!FIT「初期投資支援スキーム」徹底解説
事業用太陽光発電(屋根設置)の注意点
事業用の場合、規模と容量によって売電方法が異なることに注意が必要です。
- 50kW未満(屋根設置):自家消費で使いきれなかった分の余剰売電
- 50kW以上の産業用太陽光発電(屋根設置):自家消費か全量売電のどちらかを選択
50kW以上の屋根設置太陽光の場合は、現在の電気料金水準を考慮すると自家消費を選択した方がメリットが出る可能性が大きいでしょう。
電力会社から買う電気の単価が30円/kWhを超えるケースが増えている状況下では、先述のFIT/FIP売電との価格差が大きくなります。自家消費による「買わなくて済んだ電気代」の節約効果の方を選択する、ということです。

イラン情勢を受けて家庭と企業が今やるべきこと

ここまで見てきたように、イラン情勢による電気代高騰リスク、JEPX市場の時間帯別価格差、そして国の政策支援など、「太陽光+蓄電池」の導入を後押しする条件が揃っています。
最も重要なのは、太陽光発電の目的を「売電で利益を得る」から「電気代高騰・停電からの自衛手段」へと転換することです。
一般家庭・企業それぞれの推奨構成
| 対象 | 推奨構成 | 理由 |
| 一般家庭 | 屋根太陽光+家庭用蓄電池+HEMS | 昼間の発電を蓄えて高い夜間に使用 電気代大幅カット 停電時も安心 |
| 企業・工場 | 自家消費型太陽光+産業用蓄電池+BEMS | 昼間消費電力が大きい施設は買電量削減効果が絶大 JEPX価格高騰リスクを直接回避 |
※ HEMS(ヘムス)・BEMS(ベムス)とは「Home(Building) Energy Management System」の略で、エネルギー使用状況を可視化(見える化)し、最適な管理と制御を促すシステムです。
「作って・貯めて・自ら使う」が最強の防衛策
海外のエネルギー情勢に振り回されない唯一の方法は、「作って・貯めて・自分たちで使う(自家消費)」というサイクルを自前で構築することです。
企業においては、「PPAモデル」を活用すれば初期投資ゼロでの導入も可能です。
下記の記事も併せてお読みください⇨
(関連記事)【2026年最新】ストレージパリティ補助金を活用!PPAで太陽光と蓄電池を自己投資ゼロで導入できる?
まとめ|再エネは「環境対策」から「生活を守るインフラ」へ

イラン情勢は、「日本のエネルギーは海外の動向次第」という現実を私たちに突きつけました。
かつて太陽光発電や蓄電池は「環境に良い」「CO2を減らす」といったエコロジーの文脈で語られることが多い設備でした。しかし今、その役割は大きく変わりつつあります。
太陽光発電と蓄電池は「エネルギー安全保障インフラ」として、生活と事業を守るための基盤設備へと進化しているのです。 「電気代が高い」と嘆く受け身の姿勢から脱し、「自分たちで電気を作って・貯めて・使う」という長期的な備えを、今こそ真剣に検討すべき時です。
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