「市場連動型プラン」を提案する新電力会社の数が増えています。自社の電力契約を切り替えることを検討している企業も多いでしょう。
市場連動型プランの特徴を理解しメリットを最大限に引き出すためには、「JEPX」を理解する必要があります。
本記事ではJEPXについて最低限理解しておくポイントを分かりやすく解説しますので、
電力会社および契約プランの変更を検討されている方はぜひ参考にしてください。
JEPXの基本を解説
JEPX(ジェーイーピーエックス、ジェイペックス)は「Japan Electric Power Exchange」の略称で、正式名称は
「日本卸電力取引所」です。
JEPXは発電事業者と小売電気事業者が電力を取引する市場で、事業者間の取引の手間を省き電力の自由取引を活性化させることに貢献しています。
JEPXの沿革と目的
JEPXは日本の電力業界における高コスト構造と内外価格差の是正を目的とした「電力自由化」の流れのなかで設立されました。2003年に経済産業省資源エネルギー庁の意向を受けてJEPXが設立され、2004年より取引会員の募集が開始されています。
JEPXの取引会員は2024年9月現在で 3 1 9 社 に達しており、現在では日本全体の販売電力量の30〜40%まで拡大しています。
電力自由化により段階的に規制緩和が実施されたことで、電力小売りに新規参入する小売電気事業者(いわゆる「新電力」)が急増しました。
しかし大多数の新電力会社は自前の発電設備を持たないため、電力の安定確保に不安があります。
大手電力会社と新電力会社の競争原理を働かせて電力のコストダウンを図るためには、電力の調達方法と取引の簡便化が必須です。
そこで、発電事業者と小売電気事業者が安定的に電気の取引ができるように設立されたのがJEPXです。
新電力に関してはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてお読みください。
電力自由化とJEPX
国内においては電気事業法の規制により、東京電力や関西電力といった地域ごとの大手電力会社が独占的に電気の販売・供給を実施していましたが、世界的な規制緩和の流れの中で徐々に他企業の参入が認められるようになりました。このことを「電力自由化」と呼びます。
電力自由化は2000年から段階的にスタートしています。まずは契約電力2,000kW以上の「特別高圧(20,000V)」区分から自由化が始まり、大規模工場やデパート、オフィスビルなどで電力会社を自由に選択できるように規制緩和が行われました。
その後、2005年に「高圧(6,000V)」区分にも自由化が拡大され、2016年からは、「低圧(100/200V)」を含めたすべての区分で自由に電力会社を選べるようになっています。
JEPXの取引エリア
JEPXでは発電事業者と小売電気事業者が国内の余剰電力を毎日市場取引で売買しています。
北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電量・四国電力・九州電力の9つのエリアごとに市場が分かれており、それぞれのエリアで後述する4つの市場取引が日々行われています。
エリアが分かれているのは、送電網はエリア間で完結することが原則でエリアをまたぐ送電はできないためです。
JEPX電力市場の種類
JEPXでは主に以下の4つの市場で入札による取引が行われています。
JEPXは最低30分・50kWh単位の少量パケットで購入できるため、柔軟性の高い電力調達方法といえます。販売規模が小さい新電力でも利用することができるのが大きなメリットです。
一般社団法人日本卸電力取引所「日本卸電力取引所ガイド」より抜粋
ベースロード市場
原子力発電や大型水力発電など、安定的に発電を続ける電源(ベースロード電源)の電力1年分を取引する市場です。
先渡市場
1年・1カ月・1週間単位の電力を取引する、先物市場としての役割を果たします。年間商品・月間商品・週間商品の3つの取引タイプがあり、最大で3年前から購入が可能です。
スポット市場
JEPXのメインとなる市場で、翌日に必要な電力を前日に購入する市場です。次章で詳しく解説します。
時間前市場
電力の安定供給に必要な需要と供給の同時同量の原則(インバランス)を担保するために必須の、需給調整用の市場です。実際に電力を使用する1時間前までに取引が行われます。
(参考)先物市場
先物市場としては、JEPXの他にも調達先が存在します。エネルギーの先物取引に特化した商品取引所である「東京商品取引所(TOCOM)」です。これは、将来必要な電力を前もって特定の価格で購入するための市場で、実際に使用する15か月前から購入が可能です。
JEPXで取引される電気の種類
JEPXを通して売買される電力は、水力、火力、原子力、FIT電気、再生可能エネルギーなどの各種の電源種類のものがミックスされており、発電所や電源種類を指定して取引することはできません。
参考までに、日本卸電力取引所を通じて購入した電気のCO2排出係数は2023年度受渡分は0.000477t-CO2/kWhとなっています。東京電力が0.000398t-CO2/kWhですので、再エネ比率はやや少な目の傾向となっています。
JEPXスポット市場について詳しく解説
JEPXスポット市場は、翌日分の電力を30分単位(「1コマ」と呼ばれます)で売買する市場です。
市場連動型メニューを提供する新電力会社はJEPXスポット市場での100%調達を原則とする場合が多く、検討の際にはその特色をよく知っておく必要があります。
一般社団法人日本卸電力取引所「日本卸電力取引所ガイド」より抜粋
JEPXスポット市場のルール
JEPXスポット市場では、エリアごとコマごとに、売り札・買い札の量と希望価格で約定価格が決定します。
取引形態は「ブラインド・シングルプライス・オークション」と呼ばれる方法で、他者の入札価格・量が分からない状態で希望価格と量を入札します。すべての入札を売買に分けて合成し、約定した最低価格ですべての売買単価と量が決定します。
入札参加者は約定価格で強制的に購入させられるため、単価はエリアごとコマごとに一元的に決まることが特徴です。
なお、入札受付時間は前日の午前8時から午後5時までで、入札当日の10時に約定処理が行われます。
JEPXスポット市場の価格変動要素
JEPXスポット市場の約定価格が決まる最も大きな要素は、需要と供給のバランスです。つまり、供給に対して需要が多ければ高くなり、需要が少なければ安くなるということになります。
例えば、気候が穏やかな時期で天気が良く、太陽光発電がフルに発電している状況での休日の昼間などは、事業需要が少ないため価格は下がる傾向にあります。
逆に、真冬で天候が悪く、家庭での暖房需要が急増する平日の夕方から夜にかけては高値になりがちです。
市場の傾向を決めるもうひとつの大きな要因は、石油や天然ガス、石炭などの燃料価格です。
国内の電源構成は火力発電が7割超であるため、火力発電に掛かるコストが反映されるためです。燃料はほぼ輸入に頼っている状況ですので、海外(特にEU)の燃料在庫や燃料価格の上下によって市場も変動する傾向があります。
JEPXスポット市場の価格動向
実際のJEPXスポット市場の価格動向を見てみましょう。
長期価格動向
2005年〜2024年の年度ごと平均価格(システムプライス)は次のような推移となっています。
卸市場の開設当初より比較的安価な単価で取引されており、2023年度は10.74円/kWhでした。
これは、JEPXが「余った電力を取引する」という主旨の市場であることが要因です。
JEPX価格はあくまで卸値であって、小売電力事業者を通して消費者に届くまでには送電コストや販売経費などが上乗せされます。それでも、地域大手電力会社の従量料金単価の1/2〜1/3という非常に安価な金額で取引されていることには変わりがありません。
ただし、2022年度は市場が高騰し、20.41円/kWhという高値を付けています。このような高騰期の取引リスクがあることにも注意が必要です。
過去1年の価格動向
2024年9月を起点とした過去1年間の平均価格(システムプライス)は次のような推移となっています。
電力需要が多い夏場と冬場に価格が上昇し、気候の穏やかな春と秋には市場価格も落ち着くことが見て取れます。JEPXを利用する際には、このような季節ごとの特性を掴むことが重要です。
1日の価格動向
参考に2024年8月1日(木曜日)の1日の値動きを見てみましょう。
JEPX価格は夕方から夜間にかけて上昇する傾向があります。これは昼間の仕事が終わり帰宅する時間帯にあたり、家庭内需要が急増するためです。近年は、エリアによっては太陽光発電の発電量が増えて供給過多になっており、昼間に極端に安価になる傾向が見られます。
新電力の市場連動型プランとは?
近年ではJEPXスポット市場の特色を生かした、電気料金の市場連動型プランが続々と生まれています。
これは、小売電気事業者(新電力)がJEPXスポット市場から100%調達することを原則として料金体系を組み立てるもので、JEPXスポット市場での取引価格と従量料金を連動させることに特徴があります。
一般的には、地域の大手電力会社から購入する金額よりも安価になる傾向があります。ただし、時期や国際情勢によっては高騰リスクもあることを理解しておくことも大切です。
市場取引価格が安くなりやすい昼間の需要が多いなど、需要家の電力使用状況によっては大幅な経費削減につながる可能性がありますので、積極的に検討してみましょう。
新電力の市場連動型メニューについては、次回記事で詳しく解説しますのでご期待ください。
JEPXを正しく理解して電気料金の節減につなげましょう!
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