次世代の太陽光発電ペロブスカイト太陽電池とは?
クリアファイルのように薄く、衣服にも貼り付けられる太陽光パネルを見たことはありますか?
2025年大阪万博で話題になった、着ているだけで発電ができる「スマートウェア」。
このスマートウェアに貼り付けられていた太陽光パネルが「薄く・軽く・加工しやすい」最新の次世代太陽電池、ペロブスカイト太陽電池です。
今回は、将来の日本のエネルギー事情を大きく左右する話題のペロブスカイト太陽電池について現在進行中の実証実験を例に掘り下げてみます。

ペロブスカイト太陽電池は次世代の太陽光発電
エネルギー資源の8割以上を海外に依存する日本にとって、再生可能エネルギーの活用はこれからの不安定な世界情勢を生き残る上で欠かせない課題といえます。
2023年の国内の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は22.7%で、前年からおよそ2%増加しています。
自家発電を含めると過去最高の25.7%を記録しています。
再生可能エネルギーの中でも太陽光発電は9.3%から9.8%となっていて、次に高い風力発電が0.9%から1.1%へ増加したことと比べても、際立っています。
一方で、太陽光発電パネルそのものは寿命を迎える時期にさしかかり、交換費用や処分方法が太陽光発電の課題になっています。
経済産業大臣も「次世代太陽電池の本命」と位置づけているペロブスカイト型太陽電池は、これからの時代に欠かせない技術といえます。
政府の掲げる「2030年までに1 kWh14円以下の発電コストを達成する目標」、東京都の普及拡大計画「Airソーラー」、そして神奈川県で実証実験中の「次世代型太陽電池普及促進事業費補助金」で国を上げての実用化が急がれています。

ペロブスカイト太陽電池の特徴

ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池とは異なる素材・違う仕組みで電気を生み出しています。
ペロブスカイト太陽電池の技術に触れる前に、従来の太陽電池(シリコン型)も含めた太陽電池の仕組みをおさらいしてみましょう。
太陽電池は、「光エネルギーを電気エネルギーに変える」発電方法で、光エネルギーをどのように電気エネルギーに変えるかの違いで「pn接合型ダイオード型太陽電池」と「色素増感太陽電池」の2種類が実用化されています。
pn接合型ダイオード型太陽電池は、ダイオードと名前がつけられているように、LED電球の発光ダイオードが「電気を光に」変える逆の過程で「光を電気に」変えています。
素材はシリコンが使われてる製品がほとんどを占めるため、シリコン系太陽電池とも呼ばれています。
もう片方の色素増感太陽電池は、太陽光パネルに塗られた専用の色素(紺色の部分)に光が当たることで発電します。
素材は、有機系の素材や新開発された材料が使われることが多く、ペロブスカイトと呼ばれる独特の結晶構造の素材の名前が元になっています。
従来の太陽電池との3つの違い
ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽電池(シリコン型)は、素材と発電方法が全く異なる太陽電池です。
その違いは、太陽電池としての役割にも大きな違いが生まれます。
・コストの違い
・耐久性の違い
・汎用性の違い
コスト
従来の太陽電池(シリコン型)に比べ、構成部品が少ないペロブスカイト太陽電池は安価に製造することができます。さらに、「軽い・薄い」ということは保管や輸送のコストも安いということにつながります。
耐久性
耐久性においては、従来のシリコン型太陽電池が優れています。
しかしながら、精密部品を使う以上、耐用年数では数年の違いと発表されています。
汎用性
汎用性の面では、ペロブスカイト太陽電池の方が優れています。
薄く・軽く・加工しやすいペロブスカイト太陽電池は、その設置場所や用途を多方面で期待できるため、各メーカーで実用化実験が進められています。

ペロブスカイト太陽電池の主な特徴
・日本発祥の技術
・薄く・軽く・加工しやすい
・原材料費が従来のおよそ半分

2009年、桐蔭横浜大学で発明されたペロブスカイト太陽電池は日本発祥の次世代太陽電池です。
詳細記事はこちらから↓
ペロブスカイト太陽電池の生みの親|宮坂教授の偉業とは?実用化で加速するエネルギー革命!
2025年の大阪万博で公開された「スマートウェア」は、着ているだけで電気を作る画期的な衣類で、発電のためにペロブスカイト太陽電池が搭載されたことで世界中の注目を集めることになります。
詳細記事はこちらから↓
関西万博でペロブスカイト搭載のスマートウェアお披露目
太陽電池とは思えない薄さで、衣類に貼り付けることができるほど軽く、欧州ではいち早くビルの外壁に貼り付けるように使われはじめています。
ペロブスカイト太陽電池の「薄く・軽く・加工しやすい」特徴は、素材の他にも製造方法に理由があります。発電のために欠かせない薄いガラスやプラスチックでできた半導体基板の上に、専用の色素を印刷して作られています。
原材料費は従来の太陽電池の半額で、量産化が進むと発電効率は従来のまま、発電コストそのものも大幅に低くなると見込まれています。
また、研究開発の際に放射線に対して高い耐性があることが発見され、宇宙空間でも利用しやすい太陽電池として広く注目を集めることとなりました。
詳細記事はこちらから↓
ペロブスカイト太陽電池の現状と展望は?実用化事例についても解説!
日本の太陽電池生産事業
世界の太陽電池の生産量は、中国の大手5社が全世界中で利用される2/3を生産しています。
2024年のメーカー別市場シェアの内訳で、データを出荷量に絞ると実に83%が中国企業の独占状態にあるとされています。
食糧やエネルギー問題は安全保障にも直接かかわる分野で、1つの国が独占状態になると貿易を盾に言い分を聞かざるを得ないこともあります。
さらに国際情勢が悪くなると輸入が途絶え、死活問題になることもあります。
10年以上前、当時最新とされていた従来型のシリコン系太陽電池の生産を中国企業と競っていたのは他ならない日本企業でした。
しかし、当時は価格競争に敗れる形で日本が市場から撤退してしまうことになります。
エネルギー分野での市場撤退は、技術と安全を失うことでもあります。
次世代太陽電池のペロブスカイト太陽電池は、日本で開発されたこともあり世界中の生産量で日本企業が2位の順位にあります。
今度こそ、安心して使える太陽電池の国産化のため、地域はもちろん国を上げた取り組みがかかせません。

国内でのペロブスカイト太陽電池の実証実験

神奈川県での取り組み
神奈川県は、全国に先駆けて様々なペロブスカイト太陽電池実証実験に取り組んでいます。
日本で開発され、日本企業が世界2位の生産量を誇るペロブスカイト太陽電池。
次世代太陽電池で世界一を目指す取り組みは、既に神奈川県で始まっています。
2024年07月22日、神奈川県鎌倉市の江の島海岸の建物にペロブスカイト太陽電池の設置を行う実証実験を進め、2025年9月8日に実験を終了し、県内の企業での新しい太陽光発電の実証実験の費用2/3を県が負担する「次世代型太陽電池普及促進事業費補助金」に取り掛かっています。
神奈川県を代表する企業から、新しい取り組みに挑戦する新興企業がそれぞれの計画を発表し、中には実用化に取り掛かる企業もあります。
PXP株式会社
太陽電池の設計と施工を手掛けるPXP株式会社は、ペロブスカイト太陽電池の中でも、特に発電効率が高い新開発の「CIS軽量タンデム太陽電池」を大面積で利用し、これまで太陽電池の取り付けられなかった新領域開拓への事業に取り掛かっています。
ぺクセル・テクノロジーズ
桐蔭横浜大学のベンチャー企業として設立されたぺクセル・テクノロジーズは、色素増感太陽電池の研究開発と企業サポートに取り組む企業です。
技術開発とアフターサービスに力を入れており、ペロブスカイト太陽電池の技術開発に必要な部材と試薬の実験用キットなどの販売と測定装置の使用方法のサポートに取り組んでいます。
株式会社ベイサン
・防災用品に活用する実証実験
株式会社ベイサンは、リチウムイオン電池の生産を手掛ける企業で、産業機械用やロボット用の大容量バッテリーを得意としています。
今回の事業には、ペロブスカイト太陽電池の開発と実験キットを手掛けるぺクセル・テクノロジーズ、ゴム製品やアウトドア用品で培った技術で災害用エアーテントを開発するアキレス株式会社とともに参加しています。
参加の目的は、災害大国の日本でエネルギーを自給できる「発電できる災害用エアーテント」を普及させるためです。
空気で膨らますことができる災害用エアーテント、薄く折り畳みパネルになった次世代太陽電池、小型で大容量の蓄電池の3つを組み合わせたものが発電できる災害用エアーテントです。
製品は既に公開され、2025年11月8日、9日に行われる新横浜パフォーマンスで発表され、2026年1月からは神奈川県総合防災センター2Fに展示される予定です。

「FUN+TECH LABO」(ファンタステックラボ)
次世代太陽電池を利用した近未来的な実証実験もあります。
神奈川県相模原市リニア駅にペロブスカイト太陽電池の中でも最新の設備を設置しようという取り組みです。
神奈川県相模原市リニア駅周辺は、「FUN+TECH LABO」(ファンタステックラボ)と呼ばれる新技術のモデル地域です。
「FUN+TECH LABO」に設置されるのは、耐久性の高いカルコパイライト型太陽電池(CIS系)と、薄く・軽く・加工しやすいペロブスカイトを組み合わせた「ペロブスカイトCIS軽量タンデム太陽電池モジュール」という新開発された太陽電池です。
手掛けるのは、太陽電池の設計と施工を手掛けるPXP株式会社で、今回の「次世代型太陽電池普及促進事業費補助金」の参加企業の多くに設備を提供しています。
JR横浜線古淵駅周辺に、以前の5倍の規模の研究開発・生産施設を新設したPXP株式会社は、ペロブスカイト太陽電池の試作能力が10倍(年産メガワット級)に増強されたと発表しています。PXP株式会社には、次世代太陽電池生産の先頭に立ってほしいものですね。
「神奈川中央交通株式会社

わたしたちの日常生活に近いところでも、次世代太陽電池の活用試みが始まっています。
神奈川県民の生活の足でもある神奈川中央交通株式会社は、PXP株式会社が生産するカルコパイライト型太陽電池(CIS系)をバスに搭載する実証実験を始めています。
実施されるのは、神奈川中央交通の平塚営業所管内の路線で運行されるバスの屋根に次世代太陽電池を搭載、発電された電気を冷暖房や空調設備で使うことで、燃費の改善を試みるという実験です。
暮らしに身近な交通機関で使われることで、新規開発された技術がより身近で分かりやすくなりますよね。

ペロブスカイト太陽電池の安全性と将来性は?
ペロブスカイト太陽電池は安全なのか?
日本発祥のペロブスカイト太陽電池は、「薄く・軽く・加工しやすい」特徴があり、世界中の生産量で日本企業が2位でもあり、今後の需要増加によって大きな産業になる期待もされる新技術です。
新技術というと、いい面ばかり聞こえてしまいますが、工業製品である以上もちろんデメリットもあります。
ペロブスカイト太陽電池の原材料費には鉛を含む化合物が使われることが多く、生き物に対して安全性の問題があるとされています。
中でも、RoHS (特定有害物質使用制限指令)によって規制対象となっていることは製品の流通に影響を生む問題として解決が急がれています。
海外での利用と将来性
将来性の面では市場規模と耐久性の2つでメリットがあると考えられています。
2040年には、ペロブスカイト太陽電池の年間の世界市場が約4兆円規模、日本国内市場も同年に342億円規模とされています。
日本企業が世界シェアを目指すことで、大きな経済的利益を日本にもたらしてくれることでしょう。
耐久性を比べた場合、従来のシリコン型太陽電池の20〜30年に比べ、5〜10年程度が一般的です。
開発されて間もないペロブスカイト太陽電池は、これから改良が重ねられることが期待でき、性能の伸びしろがあります。
日本を含めた世界各地では、2000年代初頭に建設された従来のシリコン型太陽電池が寿命を迎え、その廃棄場所や処分コストが問題視されています。
現時点では、従来のシリコン型太陽電池に比べ耐久性の劣るペロブスカイト太陽電池ですが、「薄く・軽く・加工しやすい」特徴はそのまま「スペースを取らず・移動しやすく・処分しやすい」というメリットにもなります。
ペロブスカイト太陽電池のまとめ

「薄く・軽く・加工しやすい」ペロブスカイト太陽電池の実用化は、かつて太陽電池の分野で最先端を進んでいた日本が、再び世界一のシェアを目指したい分野です。
エネルギーの安定供給、太陽電池の耐久性と廃棄処分の問題、防災リスクの問題、メガソーラーによる自然環境の問題の話題も増え、「大規模で耐久性が高い」設備から「耐久性が低くても汎用性が高い」設備への変化が求められています。
日本企業が開発し、関東を中心に実証実験が始まった次世代太陽電池は日本の今後を左右する技術になるのかもしれませんね。
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