再エネ発電事業を行う上で、必ず把握しておかなければならない法令の1つが「再エネ特措法」です。
再エネ特措法は、再エネ発電市場の健全な成長を促進するとともに、長期的に安全かつ安定した運用を行うための環境整備の役割を担っています。
そんな再エネ特措法が2024年に改正され、これまでになかった新たな要件の追加や条件の変更などがありました。
そのため改正内容を正しく理解していないとFITやFIP認定に想定以上に時間を要したり取得できない可能性すらあります。
ここでは、再エネ特措法が2024年に改正された5つのポイントについて、わかりやすく解説していきます。
再エネ特措法とは?
「再エネ特措法」とは、再エネ発電設備の電力を買い取る価格や期間などを定めた法律で
正式名称は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」です。
以前はFIT法と呼ばれていましたが、2022年からFIP制度がスタートしたこともあり、現在では総称して再エネ特措法という名称が使われるようになりました。
再エネ特措法では、買取価格や期間などの条件を定めるだけでなく、その他認定に関する要件やルールが定められています。
2011年に制定され2012年から運用の始まった制度ですが、何度かの改正を経て今回2024年4月に改正法が施行されています。
再エネ特措法が2024年に改正された5つのポイント
再エネ特措法は第211回国会でGX脱炭素電源法の1つとして改正案が提出され、改正法が2023年5月に成立、2024年4月から施行されています。
ここでは、今回の2024年改正で変更となった主要な5つのポイントについて、詳しく解説していきます。
- 土地開発に関わる許認可の認定手続きが厳格化
- FIT/FIP認定に説明会と事前周知が必要に
- 委託先事業者の監督義務が追加
- 事業計画違反すると売電収入の返還ペナルティ
- 追加投資部分のみへの新買取価格の適用
土地開発に関わる許認可の認定手続きが厳格化
再エネ特措法の改正ポイントの1つとしてFIT/FIP認定手続きの申請要件として土地開発の許認可が追加となった点が挙げられます。
再生可能エネルギーの発電設備を設置時に行う土地開発で、災害時に周辺地域の安全性に大きな影響を与える可能性や、原状回復が困難なケースがあります。
そのようなリスクを低減するために、2024年の再エネ特措法の改正では、具体的に次に挙げる3つの許認可が申請要件に追加されました。
- 森林法の林地開発許可
- 宅地造成及び特定盛土等規制法の許可
- 砂防三法(砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地の崩壊による災害防止に関する法律)の許可
なお、この厳格化に関しては2024年4月の改正再エネ特措法の施行を待たず、2023年10月の「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則」の改正から施行されています。
FIT/FIP認定に説明会と事前周知が必要に
FIT/FIP認定に周辺地域の住民への説明会・事前周知が要件化されたことも、今回の再エネ特措法の改正で変更となった大きなポイントの1つと言えるでしょう。
説明会と事前周知は、ひとくくりにして説明会等と表現されることもあります。
ただ、今回の改正で、説明会等の実施がすべての再エネ発電事業で必須になったというわけではありません。
再エネ発電設備を設置するエリアや発電事業の規模によって、説明会等の実施ルールが次のように定められています。
基本的に説明会等の実施は低圧以上の発電事業が対象で、住宅用太陽光や屋根設置は対象外となっています。
また、説明会等の対象となる周辺住民は、事業場所の敷地境界から一定の距離内の居住者および、発電設備の設置場所に隣接する土地や建物所有者です。
説明会等において説明事項として求められる具体的な内容は、主に次のようなものが挙げられます。
- 事業計画の内容
- 関係法令遵守状況
- 土地権原取得状況
- 事業に関する工事概要
- 関係者情報(主な出資者等を含む)
- 事業の影響と予防措置
このほか、説明会等の実施はFIT/FIPの認定取得時だけでなく、再エネ発電事業の計画変更で変更認定を行う場合や重要事項を変更する場合にも必要となっています。
事業計画違反すると売電収入の返還ペナルティ
事業計画に違反した場合に売電収入を返還しなければならないルールが追加された点も
再エネ特措法で改正された注目ポイントです。
認定事業者が認定された事業計画に違反した場合は、必要に応じて指導や改善命令を受け、最終的に認定が取り消されます。
しかし、これまでの制度では事業計画に違反した状況が続いたとしても、実際に認定が取り消されるまでの間に実質的なペナルティはありませんでした。
そのため、違反を未然に防止したり、早期に解消することが困難な実情がありました。
今回の改正では、違反状態の間は積立命令にも基づいた積立義務を課され、交付金の一時停止を継続、違反が解消されるまで返還されなくなりました。
金銭的なペナルティを課すことで、違反状態の早期解消を目指しているわけですね。
出典:資源エネルギー庁「改正再エネ特措法の施行に向けて」
追加投資部分のみへの新買取価格の適用
2024年の再エネ特措法改正で、既存の再エネ発電設備に増設を行う場合は
追加投資した設備にだけ最新の買取価格が適用されるようになりました。
これまでは、認定の更新や増設を行った場合、新たに設置した設備だけでなく元々設置した設備も含めて全てが一律で最新の買取価格に変更されていました。
そのため、認定を取得するタイミングによっては、元々取得していた買取価格から単価が下がってしまうデメリットがありました。
そこで今回の改正では、地域共生や適切な廃棄が前提となりますが、追加投資分のみに最新の買取価格が適用されるように変更となっています。
つまり、設置済みの設備については、最初に認定を受けた買取価格が継続・維持されます。
出典:資源エネルギー庁「改正再エネ特措法の施行に向けて」
2024年の再エネ特措法の改正ポイントを正しく理解しよう
再エネ特措法は2024年4月から改正法が施行されており、ルールが大きく変わった点や新たに設定された要件などがあります。
特に、土地開発に関する許認可や説明会等の実施など、新たにFIT/FIP認定の取得要件となったものも多いです。
また、事業計画の違反時に金銭的なペナルティも課されるようになり、改正内容を正しく把握しておかないと思わぬ損失に繋がることもあります。
再エネ発電事業は足が長いので、FIT/FIP認定の手続きでつまづいているわけにはいきません。
スムーズに再エネ発電事業をスタートさせるためにも
再エネ特措法2024年の改正ポイントを正しく理解しておきましょう。
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