雪国の太陽光発電パネル設置の工夫と蓄電池との組み合わせ
再生可能エネルギーの利用が広まる中で、一般家庭でも太陽光発電を利用される方も増えています。
これから自宅に太陽光パネルの設置を考えている方や新しく暮らす先で電気の利用を工夫したい方は、既に太陽光発電について調べているのではないでしょうか?
今回は、太陽光発電にまつわる素朴な疑問「雪の影響」について、太陽光発電の特徴と雪国の気候を交えながら、まとめてみたいと思います。
太陽光発電パネルは雪で発電できなくなるの?

太陽光発電でたくさんの電力を発電したい場合、直射日光の差し込む夏が最も発電に向いていて、「冬の季節は発電ができなくなるかもしれない」と思う方は少なくはないかと思います。
もちろん、太陽光パネルの性能は、晴れた日の太陽光の利用を想定して作られています。
一方で雪国で太陽光発電の設備を取り扱うメーカーは、雪が降る冬の期間も発電量はゼロにはならないと発表しています。
太陽光発電への天候の影響は、晴れの日に対して
雨の日は10〜20%の発電量
曇りの日は10〜30%の発電量
雪が降る季節の発電量はその他の季節の約50%の発電量
があるとされています。
発電量が50%まで減ってしまっては、節電や売電に大きな影響が出てしまう心配がありますね。

雪国では蓄電池を活用することで太陽光発電のメリットを活かしやすい
太陽光発電の天候や季節の問題を解決するため、蓄電池を活用する方法が注目されています。
蓄電池は、充電用バッテリーと電気の使用を制御するシステムが組み合わされた大容量の充電設備です。
防災用品やアウトドア用品として活躍しているポータブル電源と比較して6倍以上も容量があり、ポータブル電源では対応しきれない家電を動かすこともできます。
<参考記事>
防災用品にもなる!ポータブル電源と蓄電池をわかりやすく解説
ウッドデッキ+蓄電池で自分だけのグランピング!
昼間につくった電気を蓄電池で蓄え、発電ができない時間に使うことで太陽光発電のメリットを活かす方法を本ページ後半でまとめさせていただきます。
積雪地域の気候とは?

積雪地域とは?
雪国と太陽光発電を深掘りする前に、一度気候について振り返らせていただきます。
雪国について、寒冷地、積雪地、豪雪地帯といくつかの呼び方があります。
寒冷地という呼び方は、国土交通省が定めた「新地域区分」による地域の分け方です。
気候をもとに日本国内の地域のI〜Ⅷに分け、北海道の中でも寒さが厳しい地域の「I地域」とその他の北海道から東北の標高の高い地域の「Ⅱ地域」が寒冷地と呼ばれています。
北海道の中でも比較的暖かい道南から東北の内陸部一帯、さらに長野県や山梨県などの内陸部は「Ⅲ地域」に分類され
準寒冷地と呼ばれています。
また、積雪地という言葉は一般的に使われているのですが「道路に雪が積もる地域」という少々曖昧な基準です。
正確な基準があり、地域も指定されている用語に「豪雪地帯」があります。
豪雪地帯は、「積雪が特にはなはだしいため、産業の発展が停滞的で、かつ、住民の生活水準の向上が阻害されている地域」と法律で定められています。
豪雪地帯は、北海道と北東北の青森県・秋田県・岩手県の全域、東北と北陸の日本海沿岸部、本州を縦断する山地部が含まれ、全国の約31%の自治体が豪雪地帯にあたります。

積雪地域の気候の特徴
豪雪地帯の気候とひと言で言っても、地域によって気温も降雪量も様々です。
そこで、豪雪地帯にある政令指定都市と中核都市の中から気候に特徴のあるいくつかの都市で、冬の期間の最も寒く雪が多い月の平均気温と降雪量を比較してみます。
・北海道札幌市、平均気温-3.2℃(1月)、降雪量137cm(1月)、湿度69%(1月)
・北海道旭川市、平均気温-11.8℃(2月)、降雪量125cm(1月)、湿度82%(1月)
・秋田県秋田市、平均気温-2.1℃(1月)、降雪量100cm(1月)、湿度74%(1月)
・岩手県盛岡市、平均気温-5.2℃(1月)、降雪量63cm(1月)、湿度73%(1月)
・新潟県新潟市、平均気温-0.1℃(2月)、降雪量63cm(1月)、湿度74%(2月)
比べてみると、意外なことも知ることができます。
降雪量は、北の地域にある旭川市よりも札幌市の方が多く、北海道よりはるか南の盛岡市の方が冬の平均気温は低くなっています。
全ての地域に当てはまるわけではありませんが、北日本の冬の天気は「日本海側で雪が多く」「太平洋側は寒さが強い」特徴があるため、太平洋側にある盛岡市は寒く、内陸部の旭川市よりも日本海側の札幌市の方が雪が多く降ります。
積雪地域と太陽光発電

太陽光発電の積雪地域でのメリット
冬の期間に雪の降る積雪地域は、太陽光発電にとってはデメリットが多い印象があると思います。
実は、積雪地域は太陽光発電に向いた、いくつかのメリットもあります。
①発電効率が高い
②台風の影響が少ない
③年間発電量が安定
太陽光発電は気温約25℃で最も発電効率が高く、それ以上の温度では発電効率が低下する特徴があります。
先ほどの豪雪地帯の都市の1カ月の最高気温の平均が25℃以上の月は、次のように発表されています。
・北海道札幌市(2カ月間)
・北海道旭川市(2カ月間)
・秋田県秋田市(3カ月間)
・岩手県盛岡市(2カ月間)
・新潟県新潟市(3カ月間)
平均気温が25℃以上の月が2〜3カ月間の積雪地域は、夏季の発電ロスが少なく太陽光発電のメリットを生かせる土地でもあります。
また、夏の終わりから秋にかけては日本列島に台風が上陸する季節です。
この季節の積雪地域は、上空を冷たい空気が覆い、台風が上陸しにくい気候でもあります。
冬の日照時間の少なさ、雪によって冬季の発電量は少なくなりますが、一年間を通した発電量は暑い地域に比べて多く、台風の影響の少ない積雪地域は太陽光発電にとってメリットも大きい地域でもあります。
太陽光発電の積雪地域でのデメリット

メリットの一方で、積雪地域ならではのデメリットもあります。
それは、もちろん雪が降ることによる影響です。
①積雪で発電量が低下
②太陽光パネルの損傷
③落雪のトラブル
雪が積もり太陽光パネルが覆われてしまうと、太陽の光が反射され発電量は低下します。
また、積雪地域に積もる雪は、春になり解けるか、除雪をしない限り層のように積もります。
雪が積もらない地域にお住いの方にとっては、想像がしにくいのですが、数10cmの雪が積もると一番下の数cmは硬い氷、中間の10cm以上はカップのかき氷のような押し硬められた硬い雪になります。
硬い氷と雪によって太陽光パネルの表面が壊れてしまうこと、雪崩のように積もった雪が落ちることで設備の基礎や柱、周辺の設備が被害を受けることもあります。
高価な太陽光発電の設備にとって、雪による損傷は大きなデメリットでもあります。
ただし、近年こういった積雪地域で活用しやすいパネル開発も進んできていますので、将来的には改善される期待があります。
<参考>
京セラが豪雪地域向け新太陽発電システム開発

気になる発電量は?
積雪地域に太陽光パネルを設置するメリットとデメリットを知ったあとは、実際にどのくらいの発電量の違いがあるのかが気になるかと思います。
発電量に関係する「システム容量」「発電量係数≒年間予想発電量」という用語があります。
システム容量とは、太陽光パネルが最大どれだけ発電できるかを表すもので、数字が大きいほど大きな電力を発電する性能があります。
システム容量そのものは、太陽光パネルの比較のために使われています。
発電係数は、システム容量が同じ太陽光発電パネルで一定期間(1日や1年間)の発電量を計算した数値です。
住宅に設置する太陽光パネルは、システム容量1kWで1日の発電量の目安は約2.7kWhとされています。
全国平均と地域別発電量係数(年間予想発電量)は、次のように発表されています。
全国平均 1303 kWh/年
札幌市 1225 kWh/年
秋田市 1108 kWh/年
盛岡市 1234 kWh/年
新潟市 1140 kWh/年
福岡市 1224 kWh/年
那覇市 1217 kWh/年
積雪地域の札幌市、秋田市、盛岡市、新潟市は全国平均を下回ってはいるものの、南側2つの都市と見比べてみてください。
九州の福岡市は盛岡市に比べて年間の発電量係数が低く、雪とは無縁の那覇市は盛岡市と札幌市を下回っています。
「年間発電量が安定する」という太陽光発電のメリットは、噂だけではないことがわかります。

雪国の太陽光発電の工夫
太陽光発電での雪対策
雪国の太陽光発電で起こる3つのデメリット
「積雪で発電量が低下」
「太陽光パネルの損傷」
「落雪のトラブル」
の影響を少なくするためには、設備そのものの対策と管理する人の工夫の両方が必要です。
発電量の低下は日々の電気料金に、設備の損傷は修繕費になり持ち主の方に返ってきてしまいます。
特に設備の損傷は、太陽光パネル本体の交換で数十万円から数百万円のコストになってしまいます。

雪に強い太陽光発電パネルはあるのか?
設備そのものの対策として、そもそも「雪に強い太陽光パネル」はあるのでしょうか?
答えは、あるようです。
雪に強い太陽光パネルは、雪を解かして積もりにくくする「融解機能」
積もった雪の重さに耐える「積雪耐久」の2つの機能を持った設備です。
雪国の対策を得意としたメーカーもあり、ネクストエナジーの太陽光発電パネルは、積雪荷重8,000Paと一般的な商業用パネルと比較して約1.5倍の積雪耐久があります。
海外メーカーでは、雪国カナダのカナディアンソーラーの製品は、平均的な積雪耐久の2.25倍もあり、豪雪地帯に対応したモデルとされています。
雪国での太陽光発電の設置の工夫

太陽光パネルそのものの選び方の他に、設置の工夫をするかしないかは、大切な選択のひとつです。
積雪地域で太陽光発電パネルの設置実績のある企業では、おおよそ3つの工夫を推奨しています。
①太陽光パネルの角度をつける
②地面から太陽光パネルまでの高さを上げる
③架台の強化工事
太陽光パネルは、最低でも15度以上、大雪の地域でスムーズに雪を落としたい時は30度程度の角度での設置が勧められています。
また、地面から太陽光パネルまでの高さを上げる対策は、滑り落ちた雪が積み重なり、パネルが埋もれてしまうことを避けるために必要な方法です。
さらに、架台の強化工事を行うことで、万が一大雪が積もり太陽光パネルが壊れても、架台や配電設備の損傷といった、大きなリスクを避けるために重要な対策です。
また、どうしても心配になり降り積もった雪を避けたくなると思いますが、3つの対策は「雪を自然に滑り落とす」ための方法です。
太陽光発電パネルの下からの雪下ろしは、落雪事故を避けるために行わないよう呼びかけられています。

雪国では太陽光発電と蓄電池の組み合わせが最適
雪国で太陽光発電を活かすためには、「雪に強い太陽光パネルの選択」と「設置の工夫」は欠かせない対策です。
もうひとつ、雪国の太陽光発電と相性のいい設備として蓄電池を活用する方法があります。
太陽光発電の設備には
「電気をつくる(太陽電池モジュール)」
「電気を変換する(パワーコンディショナー)」
「電気を振り分ける(分電盤)」
「電気を使う(家電)」
という4つの役割があります。
この設備の中に、5つ目の役割「電気を貯める(蓄電池)」が加わることで、太陽光発電のデメリットを減らし、雪国ならではのメリットが大いに活かされます。
太陽光発電は、太陽が出ている晴れた日の昼間に電気をたくさんつくります。
晴れた日に発電した電気を貯めておき、雪の多い日に使用することで、「積雪で発電量が低下」というデメリットが少なくなります。また、雪国ならではの春と秋の「発電効率が高い」時期は、発電し過ぎた電気のロスを抑えることができます。
蓄電池と太陽光発電の組み合わせは、発電した電気を無駄なく消費できる画期的な仕組みとして利用が広まりつつあります。
<参考記事>
防災用品にもなる!ポータブル電源と蓄電池をわかりやすく解説
ウッドデッキ+蓄電池で自分だけのグランピング!
まとめ

冒頭で取り上げた「太陽光発電パネルは雪で発電できなくなるの?」という疑問の答えは
「雪でも発電できる」でした。
もちろん、発電効率は下がってしまうため、雪に強い「融解機能」「積雪耐久」の2つの機能を持った太陽光パネルを選択し、設置の工夫が欠かせません。
さらに、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、雪国の太陽光発電のデメリットを減らし、メリットを伸ばす理想的な仕組みです。
雪によるデメリットさえ減らすことができるなら、発電効率が高く年間発電量が安定し、台風の影響が少ない積雪地域の雪国は、太陽光発電向きの地域でもあります。
雪国にお住いの方は、ぜひ現地で施工実績のある販売店へ問い合わせてはいかがでしょうか?

本記事はプロモーションを含んでいます