ZEH住宅では一年を通して室内が快適な環境になるだけでなく、家計の光熱費を大幅に抑えることが可能です。
蓄電池を併せて導入すれば、大規模災害などで停電が発生しても照明や家電製品を動かせるなどのメリットもあります。
しかし、主にコスト面でのデメリットもありますので導入には慎重な検討が必要です。
本記事ではZEH住宅のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
ハウスメーカーや工務店に勧められるままにZEH住宅を建てて後悔しないために、新築住宅の購入を検討されている方はぜひ参考にしてください。
ZEH住宅とは?4つの定義とZEHが必要とされる理由
前回の記事では「ZEH(ゼッチ)」住宅の基準と補助金について解説しました。
ここで簡単にZEH住宅の定義についておさらいしておきましょう。
ZEH住宅と認定されるための4つの定義
断熱性能を強化した上で太陽光発電などによる再生可能エネルギーを導入し、省エネルギー性能を従来よりも大幅に高めた住宅がZEH住宅です。
ZEH住宅として認定されるためには次の4つの要件を満たす必要があります。
- 断熱性能が基準値以上であること
- 「一次エネルギー消費量(※)」が基準値以上削減されていること
- 太陽光発電などの「再生可能エネルギー」が導入されていること
- 一次エネルギー消費量から再生可能エネルギー導入量を差し引くとゼロ以下になること
※ 一次エネルギー消費量・・・冷暖房・換気・給湯・照明に使用する電気やガス、石油などのエネルギー使用量。家電製品に使用する電力などは対象外。
ZEH住宅が必要とされる背景

ZEH住宅が推進されている背景には、政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言があります。
地球温暖化の主要な原因となる、二酸化炭素を代表とする「温室効果ガス」の削減が国際的な課題となっています。
二酸化炭素の排出量は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を使用する火力発電所の発電量に大きく影響されます。
もっとも効果的な対策は、エネルギー消費の絶対量を抑えることと、化石燃料由来の電力を可能な限り削減して太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」を利用した発電方法に置き換えることです。
2050年カーボンニュートラルまでのマイルストーンとして、日本政府は「2030年までに2013年比で温室効果ガスの排出量を46%削減」するとしており、その達成に向けて各分野で様々な施策が実施されています。
新築から運用、解体までの間に多くのエネルギーを使用する建設分野では国内の全排出量の3割以上を占めるとされ、住宅部門の中心的な対策として推進されているのがZEH住宅です。
政府は省エネ性能に優れる上に再生可能エネルギーを導入するZEH住宅を2030年度から新築住宅に義務化する方針です。その目標に向けて、補助金等の優遇制度を設けてZEH住宅の建設を積極的に推進しているのです。
ZEH住宅のメリット
ZEH住宅のメリットについて、4つの点から解説します。

ZEH住宅のメリット①快適な居住性
ZEH住宅は高い断熱性能を持つため、夏は涼しく冬は暖かい快適な環境で過ごせます。
住宅内の部屋ごとの気温差も少なく冬場のヒートショック(※1)のリスクを軽減し、健康的な生活を送ることができます。また、真夏には高い断熱性能により、近年急増している住宅内熱中症(※2)のリスクも低減されます。
※1 ヒートショック・・・急な温度差による血圧の急激な変化で引き起こされる意識障害や心筋梗塞、脳梗塞などの健康被害。ヒートショックによる死亡者数は交通事故の3倍以上の数に上るとする推計もある。
参照:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター パンフレット
※2 住宅内熱中症・・・令和5年5月から9月の全国における熱中症による救急搬送人員の累計は91,467人であったが、発生場所は「住居」が最も多く、約40%を占めている。
参照:総務省消防庁 令和5年の熱中症による救急搬送状況

ZEH住宅のメリット②省エネと太陽光発電で光熱費の削減
ZEH住宅は高断熱であるため夏は外部から室内に熱が入りにくく、冬は暖房の熱が外部に逃げにくくなります。
そのため、空調に掛かるエネルギーが最小限で済み、光熱費の削減になります。
高効率空調や熱交換型換気扇、ヒートポンプ給湯器など最新の高性能省エネ機器の導入とセットであれば、光熱費の削減効果はより顕著です。
ZEH住宅のメリット③蓄電池の設置で災害時も安心
蓄電池を導入したZEH住宅では、大規模災害による停電時でも一定時間電気を使用することができます。
これにより、照明や家電製品が使用できるだけでなく、携帯電話の充電なども可能です。災害の混乱時に重要なライフラインを一時的に確保できるのは非常に心強いことでしょう。
ZEH住宅のメリット④住宅の資産価値がアップ
ZEH住宅の認定を受けるためには、「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」という公的な性能認証を取得することが必須となっています。
この性能認証は不動産取引市場で高く評価されるため、将来的に住宅を売却する際には高い査定を受けられる可能性があります。
ZEH住宅のデメリット
ZEH住宅の建築を検討する際には、以下のようなデメリットがあることも知っておきましょう。

ZEH住宅のデメリット①建築コストの増大
ZEH住宅の建築は、一般的な住宅と比べて20〜30%程度コストが増加する傾向があります。
これは、高性能な断熱材や窓を採用する必要がある上に、高性能な省エネ機器や太陽光発電システムなどの設備導入によるものです。
ZEH住宅のデメリット②設備のメンテナンス費用がかかる
高効率な空調システムや熱交換型換気扇、ヒートポンプ給湯器などの高性能設備は、その性能を維持するために定期的なメンテナンスが必須です。将来的な更新の際にも新築時と同等以上の費用が必要となるため注意が必要です。
ZEH住宅を検討する際にはイニシャルコストだけでなく、維持管理コストと将来的な更新コストも把握しておくべきでしょう。
ZEH住宅のデメリット③不確実な太陽光の発電量
太陽光発電の発電量は天候や日照時間に大きく左右されます。また、パネルの損傷や汚れによっても発電効率が低下する可能性があります。これらの要因により、安定した発電量を常に確保することは難しいのが現実です。
また、太陽光パネルは一般的に屋根上にあるため、故障などがあっても気付かないケースが多くあります。そのため、発電状況を監視するモニタリングや定期的な点検が必須となります。
ZEH住宅のメリットを十分に引き出すためには、多少費用が掛かっても保守管理業者と契約するのが賢明です。
ZEH住宅で後悔しない?デメリットはカバーできる?

ZEH住宅はイニシャルコストが高くなるだけでなく、維持管理にもコストが掛かるというデメリットについて説明しましたが、それらは光熱費の削減や補助金制度の活用、住宅ローン控除額の拡大でカバーできる可能性があります。
ZEH住宅の光熱費
ZEH住宅は、光熱費の削減により長期的に見ればイニシャルコストと維持管理コストの増加分を相殺できる可能性があります。
一般的な住宅と比較して、ZEH住宅は温暖地(例:東京)で年間6万円程度、寒冷地(例:札幌)で12万円程度光熱費を削減できるとする資料も存在します。
参照:一般社団法人住宅生産団体連合会 「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」

ZEH住宅の補助金と減税制度
ZEH住宅には様々な補助金制度や税制優遇措置がありこれらを活用することで、イニシャルコストの負担を軽減できます。
補助金の他にも住宅ローン控除の増枠や、住宅ローンの優遇金利などのお得な制度もあり、それらを賢く活用すればZEH住宅をよりお得に建築できるでしょう。
ZEH住宅の補助金と減税制度については、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【2024年最新】太陽光発電にもつかえるZEH補助金について徹底解説!

まとめ
今回はZEH住宅のメリットとデメリットについて解説しました。
ZEH住宅では一年を通して室内が快適な環境になるだけでなく、家計の光熱費を大幅に抑えることが可能ですが、初期費用や維持管理のコスト面でのデメリットもありますので、導入には慎重な検討が必要です。
ZEH住宅の建築を検討する際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解し、家族構成やライフスタイルと照らし合わせた長期的な費用対効果を考慮して判断することが重要です。
信頼できるハウスメーカーや工務店、設計事務所と相談しながら、ご自身とご家族にとって最適なZEH住宅のありかたを検討しましょう。

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