「太陽光発電は冬はあまり役に立たないのでは?」
確かに、冬場は日照時間も短くなるため一日あたりの発電時間も短くなります。しかし、気温が低い冬は太陽光パネルの発電効率が上がるという利点もあります。
すでに太陽光発電システムと蓄電池をお持ちのご家庭、あるいはこれから導入を検討されているご家庭にとって、冬こそがその真価を発揮する最大のチャンスなのです。
この記事では、太陽光発電と蓄電池を「冬モード」に最適化し、厳しい暖房シーズンの電気代を賢くカットするための具体的な活用術を、専門的な視点から解説します。
[ 本ページにはプロモーションが含まれています ]
なぜ冬の電気代は高い? 家庭の電力を圧迫する要因

冬の電気代が高騰する主な理由と、太陽光発電が冬に抱える特性について解説します。
冬の電気代が跳ね上がる4つの主要因
暖房機器の圧倒的な電力消費
最も大きな要因は、言うまでもなく暖房機器の使用です。特にエアコンは外気温と室温の差が大きいほど多くのエネルギーを消費します。外気温が5℃の時に室内を22℃に保つのと、15℃の時に22℃に保つのでは、前者の方が遥かに大きな電力を必要とします。
また、エアコン以外にも電気ヒーター、こたつ、ホットカーペットなど、熱を直接生み出す機器は消費電力が非常に大きい傾向があります。これらが一斉に稼働する冬は、電力消費量が急増するのです。
照明使用時間の増加
冬は日照時間が短く、日の入りが早まります。夕方の早い時間から照明を点灯させ、朝も暗いうちから起きる家庭では、夏に比べて照明の使用時間が単純に長くなります。
ひとつひとつ照明器具の消費電力は小さくても、家全体で長時間使用すれば、積み重なって大きな電力消費となります。
給湯エネルギーの増加
冬は水温そのものが低いため、お風呂やキッチンで使うお湯を沸かすために必要なエネルギーが増加します。また、お湯の使用量自体も寒いと増えがちです。
ガス給湯器を使用しているご家庭も多いですが、エコキュートなどの電気給湯器は、このエネルギー増加がそのまま電気代に反映されます。
電気料金単価の上昇
電気代は、基本料金や電力量料金だけでなく、発電に使われる液化天然ガス(LNG)や石炭などの燃料価格によっても変動します。冬は暖房需要で電力需要全体が増えるため、市場価格も上昇傾向になります。
太陽光発電の「冬の弱点」と「冬の強み」

では、太陽光発電は冬にどう影響するのでしょうか。多くの人が「冬は発電しない」と思いがちですが、実際には冬の「弱点」と「強み」があります。
冬の弱点|発電時間の短さ
冬至に向かって太陽の軌道が低くなり、日照時間は短くなります。夏場は朝5時から夕方19時まで発電していたものが、冬は朝8時から夕方16時まで、といった具合に発電できる時間帯が狭まります。そのため、単純に1日あたりの総発電量(kWh)が夏に比べて減少します。
冬の強み|パネル効率のアップ
一方、あまり知られていない「強み」があります。それは、「太陽光パネルは気温が低いほど発電効率が上がる」という特性です。
太陽光パネルの主な素材であるシリコンは、高温になると性能が低下する性質を持っています。冬は外気温が低いため、パネルの温度上昇が抑えられます。空気が澄んで日射さえあれば、太陽光パネルは非常に効率よく発電します。夏場よりも短い時間で、質の高い電気を生み出しているのです。
したがって、冬の太陽光発電は「短時間集中型」と言えます。この「貴重な冬の発電」をいかに無駄にしないかが、節電の鍵となります。
蓄電池を活用して自家消費量を増やす
太陽光発電の最大のメリットは「発電した電気をその場で使える(自家消費)」ことです。しかし、冬の電力消費のピークは、暖房や照明、調理が重なる夕方〜夜間(17時〜22時)に訪れます。この時間帯は、当然ながら太陽光発電は稼働していません。
蓄電池がなければ、このピーク時間帯の電力はすべて電力会社から「買う」ことになります。しかも、電力プランによっては、このピーク時間帯の電気代が最も高く設定されている場合があります。
そこで蓄電池の出番です。蓄電池は「昼間に発電した貴重な冬の電力を貯めておき、電力消費のピーク(夜間)に使う(シフトさせる)」ことを可能にします。
この「ピークシフト」こそが、蓄電池活用の最大のメリットです。すでに太陽光発電と蓄電池を導入しているご家庭は、この強力な武器を手にしています。
次の章からは、その武器を冬の電気代高騰に対して最適化する、具体的な戦略と設定方法について詳しく解説していきます。

冬の節電戦略|なぜ「設定」と「プラン」の見直しが重要か

太陽光発電と蓄電池を最大限に活用するためには、設定を季節に応じて最適化する必要があります。高性能な設備を持っていても、運用が現状と合っていなければその効果は半減してしまうのです。
FITの経済メリットの変化
FIT(固定価格買取制度)が適用されている期間は、発電した電気を電力会社が比較的高値で買い取ってくれます。そのため「自家消費」よりも「売電」を優先した方が経済的メリットが大きい場合もあります。
【太陽光発電の余剰電力買取価格(10kW未満)】
| 認定年度 | 10年固定FIT価格(円/kWh) |
| 2015年度 | 27.0円 |
| 2016年度 | 31円 |
| 2017年度 | 28円 |
| 2018年度 | 26円 |
| 2019年度 | 24円 |
| 2020年度 | 21円 |
| 2021年度 | 19円 |
| 2022年度 | 17円 |
| 2023年度 | 16円 |
| 2024年度 | 16円 |
| 2025年度9月まで | 15円 |
| 2025年度10月から(新制度) | 24円(1~4年目) 8.3円(6~20年目) |
この表で分かるとおり、FIT価格は年々下落しています。FITが終了した「卒FIT」後に地域の電力会社に売電しても8円/kWh程度となり、売電価格は大幅に下がってしまいます。
一方で、電力会社から電気を買う単価は、燃料費高騰などの影響で20円〜30円/kWh、あるいはそれ以上になっています。この状況下では、売電よりも「自家消費して電気を買わずに済ませる」方が、圧倒的に経済メリットが大きくなります。
したがって、太陽光発電+蓄電池ユーザーは「自家消費シフト」を取った方が賢明な状況が生まれていると言えます。
【参考記事】あわせて読みたい!
太陽光発電の投資回収を加速!FIT「初期投資支援スキーム」徹底解説

「常識」が変わりつつある電力料金の傾向
電力会社から購入する電気についても、従来の料金の常識が通用しなくなってきている点に注意が必要です。
【従来の電気料金の一般的な傾向】
- 日中(例 10時~17時): 料金がやや高い
- ピーク(例 18時~21時): 料金が高い
- 夜間(例 22時~翌8時): 料金が大幅に安い(深夜電力プラン)
【近年の電気料金の傾向】
- 日中(例 10時~17時): 料金が非常に安い
- ピーク(例 18時~21時): 料金が非常に高い
- 夜間(例 22時~翌8時): 料金がやや安い
このような逆転現象が起きている理由は、「原発の稼働停止と太陽光発電の普及」です。
東日本大震災後に原子力発電の稼働再開が見通せないエリアでは夜間の発電量が減少し、従来安価で供給されていた深夜電力の恩恵を得ることが難しくなっています。
一方で、太陽光発電の普及により天気が良い日の日中は全国の太陽光発電所が一斉に発電するため、電力の供給が需要を上回る「再エネ過多」の状態が起こりやすくなりました。
電力が余ると、卸電力市場の価格(JEPX価格)は暴落し、時には0.01円/kWhとほぼゼロになることさえあります。この市場価格の変動を、料金プランにダイレクトに反映するのが「市場連動型プラン」です。
【参考記事】あわせて読みたい!
市場連動型プランの仕組みとメリットを徹底解説!契約見直しで電気料をお得に

太陽光+蓄電池ユーザーが取るべき最強の戦略
この「自家消費シフト」と「新しい料金傾向」を踏まえ、太陽光+蓄電池ユーザーが取るべき戦略は下記のとおりです。
日中(料金が安い or 太陽光が発電中)
可能な限り「太陽光発電の自家消費」でまかないます。
エコキュートの沸き上げ、食洗機、洗濯乾燥機など、消費電力の大きい家電をこの時間帯に稼働させます。
特に市場連動型プランで契約している場合は、この時間帯の買電単価自体が「ほぼゼロ円」になっている可能性があり、電気代を気にせず機器を稼働できるという、圧倒的なメリットを享受できます。
ピーク(料金が非常に高い)
「できるだけ電気を買わない時間帯」と位置づけます。
蓄電池からの放電で、この時間帯の電力消費(暖房、照明、調理)をまかないます。これにより、電気の価格高騰リスクを回避します。
夜間(料金がやや安い)
どうしても必要な電気(就寝中の暖房、冷蔵庫など)だけを購入します。
翌日が雨で太陽光発電の稼働が見込めない場合は、蓄電池への充電をした方がメリットが出る場合もあります。
この戦略を実現するためには、太陽光発電システムの設定を最適化したうえで電気料金プランを見直す必要があります。
次章からは、その具体的な手順を見ていきましょう。

太陽光発電システムの「冬モード」最適化

「太陽光発電と蓄電池を設置したけれども設定は導入時のまま」という方は設定を見直してみましょう。システムが売電を優先する設定のままでは、冬の節電戦略は実行できません。
1.冬はパワコンやHEMSの設定を見直す
まず確認すべきは、エネルギー管理の司令塔であるパワコンやHEMSの設定です。ご自宅のシステムの取扱説明書やリモコン画面を確認し、現在の運転モードをチェックすることから始めましょう。
チェックポイント①「売電優先モード」になっていませんか?
「売電優先モード」や「経済モード(深夜電力を買う設定)」は、FIT期間中で売電単価が高い場合や、旧来の深夜電力が非常に安いプランを契約している場合には有効でした。しかし、冬のピーク時の買電単価が高い現在、この設定は不利に働く可能性が高いでしょう。
冬は発電量そのものが限られます。その貴重な電気が、設定一つで自動的に単価の安い売電に回されてしまうのは非常にもったいない話です。
チェックポイント②「自家消費優先モード」への変更
「自家消費優先モード(グリーンモード、自給自足モードなど)」は、太陽光で発電した電気を家庭内で消費し、余った電力を蓄電池に充電し、さらに余った場合にのみ売電する、という動作をします。
「自家消費優先モード」に変更することで、昼間に発電した貴重な電気が売電に回されるのを防ぎ、夜のピーク消費に備えるため蓄電池へと流れるようになります。
2.蓄電池の充放電スケジュールを冬仕様に
「自家消費優先モード」にした上で、さらに冬に特化した蓄電池の充放電スケジュールを設定することが、戦略の核となります。
目指すべきは「太陽光で発電した電気だけで蓄電池を満タンにし、電力消費のピーク(17時〜22時)に集中放電する」設定です。
具体的な設定のポイント
- 放電開始時間の設定✅
多くの蓄電池システムでは、放電を開始する時間を設定できます。これを、ご家庭の電力消費が最も増える時間帯(家族が帰宅し、暖房と照明、調理が一斉に始まる18時など)に設定します。 - 放電停止(または充電開始)時間の設定✅
ピーク時間帯が終わり、電気料金が安くなる時間帯に放電を停止するよう設定します。これにより、蓄電池の電力を最も効果的な時間帯に集中投下できます。 - 深夜電力での充電(タイマー充電)の停止✅
「経済モード」などでは、安い深夜電力で夜間に蓄電池を充電する設定になっていることがあります。しかし、冬の晴れた日には、昼間の太陽光発電だけで蓄電池を満タンにできる可能性があります。
日中の太陽光発電で充電できる見込みがあるなら、深夜のタイマー充電は「オフ」にするのが「冬モード」の基本です。
天気予報連携機能の活用
最新のHEMSや蓄電池システムには、「天気予報連携機能」が搭載されているものがあります。
- 翌日が「晴れ」の場合
深夜電力を使った充電を行わず、昼間の太陽光発電での充電に備えます。 - 翌日が「雨」や「雪」の場合
あらかじめ料金の安い夜間電力で蓄電池を充電しておき、電気代の高い夕方のピーク時間帯にその電力を使って電気を買わないようにします。
3. エコキュートも「昼間沸き上げ」に
エコキュートは、空気の熱を利用してお湯を沸かす高効率な給湯器ですが、その多くは「電気料金が安い深夜電力を使って、夜間にお湯を沸かし貯めておく」という設定で運用されています。
太陽光発電の余剰電力で沸き上げる設定に変更することで、深夜の買電量を大幅に減らすことができます。これも重要な「冬モード」最適化戦略のひとつになります。

電気料金プランも賢くチェンジ

太陽光発電と蓄電池の設定が完了したら、次に取り組むべきは電気の契約見直しです。
切り替え先として有力なのは、以下の2種類のプランです。
時間帯別料金プラン
「ピーク」「日中」「夜間」などで、あらかじめ単価が決められているプランです。
例えば、TEPCOの「スマートライフL」のように、「深夜(午前1時〜午前6時)の単価が安く、それ以外の時間帯(午前6時〜翌午前1時)の単価が高い」プランがあります。
この場合、「単価が高い時間帯は徹底して自家消費と蓄電池でまかない、単価が安い深夜に充電(雨天時)や一部の電力使用(暖房など)を行う」という戦略が有効になります。
完全市場連動型プラン
卸電力市場(JEPX)の価格に連動して、30分ごとに電気代の単価が変わるプランです。市場連動には価格高騰リスクがありますが、太陽光+蓄電池ユーザーは、そのリスクを回避できる手段を持っています。
価格が高騰しやすい夕方のピーク時間帯は、蓄電池からの放電で電気を「買わない」ため、高騰リスクの影響を受けにくくなります。
天気が良い日の日中は、市場価格が0.01円/kWh(ほぼゼロ円)に暴落することが頻発します。この時間帯に、太陽光発電でまかないきれない電力(例:エコキュートの沸き上げ、洗濯乾燥機、EV充電など)が発生しても、電気代がほぼタダになる可能性があります。
雨や雪の日でも、日中の価格が高騰していなければ、固定プランの高い単価で買うよりも遥かに安く済むケースが多くなります。
ご自身のライフスタイルと、導入している太陽光・蓄電池の容量を考慮し、最適なプランへの切り替えを検討してみてください。
【参考記事】あわせて読みたい!
市場連動型プランの仕組みとメリットを徹底解説!契約見直しで電気料をお得に


料金20%カットも可能! 実践シミュレーション
「設定を見直すのは分かったけれど、それで一体どれくらい安くなるの?」
そう思われる方のために、具体的なモデルケースで、対策前と対策後でどれだけ電気代が変わるかをシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション:4人家族の場合
<前提条件>
- 家族構成:4人家族(夫婦+子供2人)
- 設備:太陽光発電 4kW、 蓄電池 6kWh
- FIT売電単価:17円/kWh
- ライフスタイル:日中は共働きで子供は学校。電力消費は朝と夜(特に17時〜22時)に集中
- 冬の1日の総電力消費量:25kWh
内訳:昼間(8-17時) 3kWh / ピーク(17-22時) 12kWh / 夜間(22-翌8時) 10kWh
(※夜間10kWhはエコキュート5kWhとその他5kWh)
<対策前の状況>
- 料金プラン:従来の標準プラン(単価が一律31円/kWhと仮定)
- HEMS設定:「売電優先」設定
- エコキュート:深夜沸き上げ
- 冬の晴れた日の発電量:4kW × 3h(実発電時間)= 12kWh
- 対策前の1日の買電量:
【昼間(8-17時)】消費3kWh
発電12kWhのうち3kWhを自家消費、残り9kWhは売電
【ピーク(17-22時)】消費12kWh、すべて買電
【夜間(22-翌8時)】消費10kWh(エコキュートの沸き上げ含む)、すべて買電
- 合計買電量:22kWh
- 1日の電気代: 22kWh × 31円/kWh =682円
- FIT売電価格:9kWh × 17円/kWh = 153円
- 1ヶ月(30日)の電気代:529円 × 30日 = 15,870円
<対策後のシミュレーション>
【昼間(8-17時)】消費8kWh(エコキュートの沸き上げ含む)
発電12kWhのうち8kWhを自家消費、残り4kWhは蓄電池に充電
【ピーク(17-22時)】消費12kWh、蓄電池から4kWh供給、残りは買電
【夜間(22-翌8時)】消費5kWh、すべて買電
- 合計買電量:13kWh
- 1日の電気代: 13kWh × 31円/kWh = 403円
- 1ヶ月(30日)の電気代:403円 × 30日 = 12,090円
<シミュレーション結果>
- 削減額: 約 3,780円 / 月
- 削減率: 約 23.8%
このシミュレーションのように、月々の電気代を2割以上削減することも十分可能です。
市場連動型プランに変更して、蓄電池の余力(残り2kWh)も日中の安価な電力で充電すれば、ピーク時の売電が減ってコストメリットがさらに大きくなる可能性があります。

まとめ|冬こそ太陽光と蓄電池をフル活用しよう

太陽光発電と蓄電池は、高価な設備であると同時に、家庭のエネルギー戦略を自在にコントロールできる強力な「武器」でもあります。その性能を最大限に引き出すのは、所有者であるあなた自身の「知識」と「設定」です。 まずはご自宅のシステムのリモコンを手に取り、現在の設定を確認することから始めてみてください。設定を少し変えるだけで、今年の冬の電気代請求額は、きっと大きく変わるはずです。
太陽光発電と蓄電池を使いこなし、暖かく快適な冬をお過ごしください。


