「産業用蓄電池」と聞くと、多くの方は「災害時の非常用電源」としての役割を思い浮かべるのではないでしょうか。実際に、地震や台風などの自然災害が頻発する日本において、事業継続計画(BCP)対策としての蓄電池の重要性はますます高まっています。
しかし、高価な産業用蓄電池を万が一の停電時にしか使わないのは、非常にもったいない話です。
実は、産業用蓄電池は平時においても電気料コストの削減から収益創出まで、企業の経営に大きく貢献するポテンシャルを秘めた戦略的資産なのです。
この記事では、産業用蓄電池をフル活用するための2つのキーワード「ピークシフト」と「アービトラージ」について、具体的な仕組みから経済的メリット、そして活用できる補助金制度まで詳しく解説します。
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電気代を劇的に削減する「ピークシフト」と「ピークカット」
まずご紹介するのは、電気料金を直接的に削減する「守り」の活用法、「ピークシフト」と「ピークカット」です。
デマンド値と電気の基本料金の仕組み
高圧電力契約の場合の電気料金は、主に「基本料金」と「電力量料金」で構成されています。このうち、毎月固定でかかる基本料金は、電力の使用量(kWh)ではなく、過去1年間で最も電力を使用した30分間の電力(「最大需要電力」=「デマンド値」)によって決まります。

つまり、消費電力の大きな設備の同時使用等でたった一度でも電力使用量の大きなピークを作ってしまうと、その後1年間高い基本料金を払い続けなければならないのです。
ピークシフトとピークカット
「ピークカット」は、ピーク時間帯の消費電力そのものを抑える取り組みです。電力会社との契約の基準となるデマンド値が引き下げられ、結果として電気の基本料金の削減が期待できます。

それに対して「ピークシフト」は、電力需要が高まるピークの時間帯に使用する電力を、他の時間帯に分散させて需要を平準化させる取り組みです。1日の使用電力量の総量が変わらなくても、ピークカットと同様のデマンド値削減効果があるため電気料の削減につながります。

ピークシフトとピークカットの代表的な施策
ピークカットとピークシフトについて、それぞれの代表的な施策を以下に例示します。
【ピークカット】
- 不使用エリアの照明をこまめに消灯
- 空調の温度設定の調整や稼働台数の間引き、送風運転に切り替え
- 古い空調設備や生産機械をエネルギー効率の高い最新モデルに更新
- デマンドコントロールシステムの導入
- 自家消費型太陽光発電システムの導入
【ピークシフト】
- フレックスタイム制や時差出勤を導入し、従業員の勤務時間を分散
- 生産時間を調整し、設備の同時稼働を避ける
- 産業用蓄電池の導入

蓄電池を用いたピークカット/ピークシフトで賢くコスト削減

産業用蓄電池を用いたピークカット/ピークシフトとは、蓄電池に蓄えておいた電気をピーク時間帯に放電して使用する手法です。
これにより、ピーク時間帯に電力会社から購入する電力量を抑え、デマンド値の上昇を防ぎます。結果として、電力負荷の曲線が平準化され、年間の最大デマンド値を低く抑えられるため、電気の基本料金を大幅に削減できるのです。
【試算例】ピークカット/ピークシフトによるコスト削減効果
具体的にどれくらいの削減効果があるのか見てみましょう。
✅<前提条件>
- 契約プラン:東京電力エナジーパートナー「業務用電力」
- 基本料金単価:1,890.00円/kW
- 削減するデマンド値:50kW
<計算式>
削減デマンド(50kW) × 基本料金単価(1,890.00円/kW) × 12ヶ月
<年間削減額>
1,134,000円
この試算のように、蓄電池を活用して電力需要のピークを50kW抑えることができれば、年間100万円以上の固定費を削減できる可能性があります。これは電気料経費を削減し企業の利益に直接的なインパクトを与える、非常に効果的な手法です。
自家消費型太陽光発電との組み合わせで更なる経費節減効果!
施設に自家消費型太陽光発電設備が設置されており、日中に施設で使い切れず余剰となる時間帯がある場合は、その余剰分を蓄電池に蓄えておくことでピークカットに活用することも可能です。
その場合は電力会社から購入する電力量も削減できるため、さらに大きな経費節減効果が得られるでしょう。

蓄電池を収益源に変える「アービトラージ」とは?
次に、蓄電池をコスト削減ツールから「利益を生む資産」へと昇華させる「攻め」の活用法である「アービトラージ」について見ていきましょう。

「安く買って、高く売る」を電力市場で実現
アービトラージの原理は非常にシンプルで「電力を安い時に買って高い時に売る」ことです。これは株式投資やFX、仮想通貨の取引など一般的に用いられる手法です。
これを電力市場で実現するのが、蓄電池によるアービトラージです。
アービトラージを可能とする市場連動型プラン
アービトラージを可能としているのは、日本卸電力取引所(JEPX)での電力取引です。ここでは、電力の需給バランスに応じて30分ごとに電力の取引価格(スポット価格)が変動します。このスポット価格に連動して電気料金を決める「市場連動型プラン」で電力契約を締結していることが前提となることにご注意ください。
【参考記事】市場連動型プランについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
近年、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大したことで、JEPXの価格変動が非常に大きくなっています。
- 晴天の昼間:太陽光発電による電力供給が需要を上回り、価格が0.01円/kWhまで暴落する。
- 夕方以降:太陽光発電が停止し需要が高まるため、価格が急騰する。
この大きな価格差を利用し、価格が暴落した昼間に蓄電池に充電し、価格が高騰した夕方に売電することで、差額を収益として得ることができるのです。(売電せずに施設内での使用に回しても、電気代の差額で経費削減効果が得られます)
【試算例】アービトラージによる収益シミュレーション
では、アービトラージによってどれくらいの収益が見込めるのでしょうか。
✅<前提条件>
- 蓄電池容量:150kWh
- 充電時の電力単価:0.01円/kWh(昼間の最安値)
- 売電時の電力単価:20.00円/kWh(夕方の高値)
- 充放電効率:90%(充電した電力のうち、放電できる割合)
- 年間稼働日数:150日(価格差が大きく、取引に適した日数と仮定)
<1日あたりの収益計算>
- 充電コスト:150kWh × 0.01円/kWh = 1.5円
- 売電収入:150kWh × 20.00円/kWh × 効率90% = 2,700円
- 1日の利益:売電収入(2,700円) – 充電コスト(1.5円) = 2,698.5円
<年間収益>
1日の利益(2,698.5円) × 年間稼働日数(150日) = 404,775円
このモデルでは、150kWhの蓄電池を運用することで年間約40万円の収益を生み出す計算になります。
実際には送配電事業者への「系統連系申請」や、「アグリゲーター」と呼ばれる専門事業者等との契約などが必要になりますが、蓄電池が新たなプロフィットセンターとなり得る大きな可能性を示しています。

相乗効果で価値を最大化!太陽光発電との連携

ピークカット/ピークシフトやアービトラージを自家消費型太陽光発電と蓄電池の組み合わせで行うことで、その価値はさらに増大します。
固定価格買取制度(FIT)の買取価格が低下した現在、太陽光で発電した電気は「売る」よりも「使う(自家消費する)」方が経済的メリットが大きくなっています。
しかし、太陽光発電は日中しか発電できず、発電量が消費量を上回った分の「余剰電力」は安価で売電するか、無駄になってしまいます。
そこで蓄電池を導入すれば、日中の余剰電力を貯蔵し、発電できない夜間や天候の悪い日に使用できます。これにより、発電した再生可能エネルギーを無駄なく使い切ることができ、自家消費率が劇的に向上します。
高価な系統電力の購入をさらに削減し、太陽光発電設備の投資対効果(ROI)を最大化する「価値増幅器」として機能するのです。

産業用蓄電池への投資を後押しする補助金制度
産業用蓄電池の導入にはそれなりの初期投資が必要ですが、国や自治体が手厚い補助金制度を用意しています。これらを活用することで、投資負担を大幅に軽減できます。

国の主要な補助金
国の補助金は、蓄電池の活用方法や組み合わせる設備によって様々な種類があります。
- DRリソース導入のための補助金(DR補助金)
電力の需給バランスを調整する「デマンドレスポンス(DR)」に活用できる蓄電システムが対象です。電力系統の安定化に貢献する設備として、導入が支援されます。 - ストレージパリティの達成に向けた補助金
自家消費を目的とした太陽光発電設備とセットで蓄電池を導入する場合に活用できる補助金です。再生可能エネルギーの自家消費率向上を後押しします。 - ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)関連補助金
建物のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指すZEB化の一環として、太陽光発電や蓄電池を導入する場合に利用できる補助金です。
自治体独自の補助金
国だけでなく、各自治体も独自の補助金制度を設けています。例えば東京都では「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」として、企業が太陽光発電設備と蓄電池をセットで導入し、自家消費率を高める取り組みに対して補助金を交付しています。
これらの補助金は公募期間や要件が定められているため、導入を検討する際は、必ず最新の情報を各省庁や自治体のウェブサイトで確認するようにしましょう。
【参考記事】産業用蓄電池の補助金についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてお読みください。

まとめ

産業用蓄電池は、もはや単なる「災害対策用の設備」ではありません。
本記事で紹介した活用法を組み合わせることで、産業用蓄電池は企業のエネルギーコストを最適化し、新たな事業価値を生み出す強力なツールとなります。
政府による手厚い補助金制度や税制優遇措置が用意されている今こそ、産業用蓄電池への投資を検討する絶好の機会です。自社の電力使用状況を分析し、戦略的なエネルギー投資の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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